【ジャランジャラン】伝統の村へ デイゴの木の下に眠る先祖 フローレス島ルテン・プウ (2017年07月28日)

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 東ヌサトゥンガラ州フローレス島のマンガライ県内最大の都市ルテンには、かつての政治・儀礼の中心地となったルテン・プウ村がある。中心部から車で約10分というアクセスの良さが売りのお手軽観光地だが、あまり知られていない。村のしきたりや先祖32人が祭られている墓、裁判所の跡地などが残る県内最古の伝統村を訪ねた。
 マンガライ県は人口約29万人の95%がカトリック教徒。ルテンは標高約1200メートルにあり、夜になると肌寒い。中心部の同県庁舎付近にはカテドラル・ラマ教会などの観光名所もある。
 ルテン・プウ村を案内してくれたのは高校の英語教師を務めるダニエル・エリック・ソダさん(29)。ダニエルさんによると、「プウ」はマンガライの地方言語で「古い」という意味。村は昔から栄えた王国の政治・儀礼の中心地だった。
 村には言い伝えがある。中部ジャワ州マグラン県の世界遺産ボロブドゥール寺院遺跡群のように、一夜にして国を創造してもらう約束を精霊と交わした。千年以上前のことだが、村の人間が約束を守らなかったために未明に中断し、完成には至らなかったという。
 オランダはインドネシアの独立後、王家を残したジョクジャカルタ特別州のような統治形態でルテンの王国を存続させようとした。当時のトド(同県に残る伝統村の一つ)出身の王は、王家が象徴としてだけ残されることを恐れ反発。村で王国の政治システムを存続させ、伝統を守り続けることができたという。
 独立後、ルテンの町が近代化するにつれて伝統家屋は数を減らし、現在はその中でも40〜50年前に建てられた首長などの有力者が住まう「ンバル・グンダン」2戸を残すのみ。村人の服装も伝統的ではなくなってきている。
 村の中心には英雄を含め有力者32人が眠る墓がある。「チョンパン」と呼ばれる祭壇として今なお機能し、立ち入りを禁じている。直近では2007年にダニエルさんのおじが埋葬され、同県知事が駆け付けるなど盛大な祭事が執り行われた。
 墓の北側には、沖縄県花にも指定されているデイゴの木がそびえ、開花すれば白い花が咲き乱れる。木は村で「アジュ・カロ」と呼ばれ、収穫を祝い感謝をささげる9月の伝統儀礼「プンティ」では、供物として食肉処理する水牛などをくくりつける場所だ。
 墓の周囲は、岩で作られた道が馬のひづめをかたどるように通る。道の内側にはかつて主な移動手段だった馬をつなぐための石の突起がある。側には王子や女性が馬に乗る時の踏み台となった岩も残る。
 ダニエルさんは「ンバル・グンダンの中は、屋根の中心から、はりが多角形のそれぞれの頂点に向かって伸び、家の輪郭をかたどる。村も同じで墓を中心に道が丸く囲む。中心が村の代表者、その回りに人々がいて、はりが伸びるように土地が平等に分けられる。これが村の哲学だ」と説明する。例として同県チャンチャルにあるクモの巣状の美しい田園「スパイダーウェブ・ライスフィールド」を挙げた。
 村の南側には、現代の地方裁判所と高等裁判所にあたる、裁判所の跡地がある。判事や証人、被告人が立つ石があり、さらに南側には村に尋ねてきた人と村の代表者が対峙(たいじ)するための岩もある。国際自転車レースのツール・ド・フローレスの取材の合間に訪れた記者に、ダニエルさんは「説明しきれなかったことがたくさんある」と笑った。
 ルテンでの車のレンタル費用は、トヨタのアバンザなどが1日1台70万ルピアほど。ガイド料は1グループ30万ルピア前後という。(中島昭浩、写真も)

「アジュ・カロ」と呼ばれるデイゴの木。村のシンボルとしてそびえる
「アジュ・カロ」と呼ばれるデイゴの木。村のシンボルとしてそびえる
伝統家屋「ンバル・グンダン」の台所
伝統家屋「ンバル・グンダン」の台所

ンバル・グンダンの屋内。完成当時、内部は5層に分かれていた
ンバル・グンダンの屋内。完成当時、内部は5層に分かれていた
村の最高権力者のランベルトゥス・ダプルさん(69)。独自の慣習もあるがカトリックを信仰。「シリ」と呼ばれるかみタバコを1時間に1回たしなむ。「シリがないとご飯がおいしくないし、人ともうまく話せない」と笑った
村の最高権力者のランベルトゥス・ダプルさん(69)。独自の慣習もあるがカトリックを信仰。「シリ」と呼ばれるかみタバコを1時間に1回たしなむ。「シリがないとご飯がおいしくないし、人ともうまく話せない」と笑った

家に入るとすぐに出されたクッション。枕かと思ったが机として使うという
家に入るとすぐに出されたクッション。枕かと思ったが机として使うという
馬をつなぐための石の突起
馬をつなぐための石の突起

裁判所跡地で判事の石に座る観光客
裁判所跡地で判事の石に座る観光客

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