【アルンアルン】押し寄せるフィンテックの波

 2016年、インドネシアのフィンテック産業は急拡大した。フィンテックはファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を組み合わせた造語で、スマートフォンを使った決済や融資などの金融サービスのことだが、金融機関がITを使ってサービスを提供するというより、IT企業がITやAI(人工知能)を駆使して金融サービスを提供するとイメージした方が正しいかもしれない。したがってITに親しんでいる人々がどれくらいいるかがフィンテック発展のカギとなる。現在、インドネシアにはフィンテック企業は約140社あり、昨年は78%も伸びた。一方、銀行貸出残高は国内総生産(GDP)の4割弱、銀行口座を持つ成人も4割弱でしかない。これは、インドネシアの人々が金融サービスを必要としていないからではなく、現在の金融システムの限界ともいえる。その限界を補うことがフィンテックに期待されている。インターネット上で貸し手と借り手をマッチングさせる「ピア・ツー・ピア(P2P)」の貸し出し額は1500億ルピアに過ぎないが、そこに需要があることは明らかである。
 フィンテックの主なデバイスとなる携帯電話契約は3億件を超え、人口の126%に達する。銀行口座を持たない人も携帯は持っている。このカバレッジの広さが、フィンテック発展の基盤となる。さらにインターネットユーザーは1億人を超え、その43%は日常的にネットを使用する10〜34歳の世代である。デジタルネーティブと呼ばれるミレニアル世代(1980〜2000年生まれ)は人口の4割を占め、この世代が経済の中心となる2020年以降、フィンテックによる金融サービスが重要となることは想像に難くない。
  政府も動き出している。昨年11月、中銀は成長するフィンテック産業を監督するためフィンテック・オフィスとレギュラトリー・サンドボックス(革新的なサービスや製品の企業に現行法を適用せず、試験的な環境を提供する仕組み)を創設した。金融庁(OJK)は年末にP2P貸し出しに関する規則を定め、金融包括プログラムの一環としてフィンテックによる金融アクセスの向上を図る。
 一方、ことし5月、サリム・グループはイナ・プルダナ銀行を買収した。約20年ぶりの銀行業復帰は一歩先を見据えている。IT事業に注力し、決済や融資でフィンテック事業を展開する。昨年の第14弾政策パッケージでは電子商取引政策が取り上げるなど政府も乗り出しているが、インドネシアのフィンテックは、企業や若い世代によって進んでいくと思われる。その勢いはおそらく日本よりも格段に早いだろう。(アジア経済研究所・濱田美紀)

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