カラ副大統領が擁立 ジャカルタ知事候補にアニス氏

 ジャカルタ特別州知事選で当確したアニス・バスウェダン氏の出馬を推薦したのは、ユスフ・カラ副大統領(ゴルカル党幹部)だった――。昨年の内閣改造で、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領に教育文化大臣職を解任された後、野党連合の候補として出馬、連立与党候補のアホック知事に勝利したアニス氏の一連の動向について、政党幹部ら当事者が次々に内情を明らかにしている。来年の統一地方首長選や2019年大統領選をにらみながら、与野党の攻防が活発化しそうだ。

 内幕を最初に明らかにしたのは、国民信託党(PAN)党首のズルキフリ・ハサン国民協議会(MPR)議長。国会議事堂で開かれたMPR主催のセミナーで、ズルキフリ氏が語ったところによると、ジャカルタ知事選の候補者登録期限を目前に控えた昨年9月末、独走体勢だったアホック氏の再選を阻止するための対抗馬擁立をめぐり、各政党間の議論が活発化。民主党党首のユドヨノ前大統領とグリンドラ党のプラボウォ・スビアント党首が歩み寄り、正副知事候補を出し合って対抗馬とする方向で協議を進めた。プラボウォ氏の腹心、ファドリ・ゾン副党首(国会副議長)は「(アホック氏の対抗馬として)統一戦線を作ることで一致していた」と明かす。
 当初、ユスリル・イフザ・マヘンドラ元法務人権相が最有力知事候補で、サンディアガ・ウノ氏をその副知事候補とする案が浮上。しかし世論調査でユスリル氏は人気がなく、ハイルル・タンジュン元経済調整相にも声が掛かったが、ハイルル氏が拒否。ここでもアニス氏の名前は取り沙汰されなかった。
 そこでユドヨノ氏は長男のアグス氏を推し、プラボウォ氏はサンディアガ氏を知事候補、アグス氏をその副知事候補としてペアを組むことを条件に承諾。その後、サンディアガ氏はズルキフリ氏の公邸を訪れ、「アグス氏の副知事候補でも構わないが、ユドヨノ氏とプラボウォ氏が直接会って決定を下してほしい」と伝えてきたという。
 「2人が会うためには(任期を全うするという)5年の保証が前提となる」(ズルキフリ氏)。結局、元国軍将校の大物2人の会談は実現せず、ユドヨノ氏はアグス氏とシルフィアナ氏のペアを決定、先行して公表した。一方、出遅れたプラボウォ氏はサンディアガ氏のペア探しをやり直し、マルダニ・アリ・スラ氏(福祉正義党=PKS)を選んだ。
 20日には闘争民主党(PDIP)、ナスデム、ハヌラ、ゴルカルの4党がアホック・ジャロット組擁立を発表、翌日登録した。23日の登録期限が迫る中、これで計3組の顔ぶれが決まったはずだった。そこへ23日午前0時ごろ、外遊中のカラ氏からプラボウォ氏に電話が入り、「アニス氏を推薦する」と伝えてきた。
 アニス氏は知事候補であれば出馬するとし、サンディアガ氏が副知事候補になることを承諾。「騒動ばかりの知事(アホック氏)にはもう耐えられない。新しい知事が誕生しなければならない」(ズルキフリ氏)と、プラボウォ氏らはカラ氏の提案を受け入れたという。

■プラボウォ氏に提示
 カラ氏は2012年ジャカルタ知事選で、中部ジャワ州ソロ市長だったジョコウィ氏を担ぎ出し、メガワティ氏に知事候補として支援すると進言したことがある。ゴルカル党幹部でありながら、04年大統領選では他党のユドヨノ氏と組んで副大統領に就任。14年大統領選ではジョコウィ氏とペアを組み、ゴルカルが支持するプラボウォ氏と争った。今回はその元対抗馬であるプラボウォ氏にアニス氏を提示、有力候補が見つからず切迫した状況で確約させたことになる。
 連立与党の現職候補アホック氏を支持せず、対抗馬を担ぎ出したことについて、カラ氏は4日、副大統領官邸で記者団に対し、「プラボウォ氏にアニス氏擁立を強要したわけではない。あくまで話し合っただけ」と説明。「穏健な人物が実業家(サンディアガ氏)とペアを組む。しかもジョコウィ氏の報道官を半年務めたことがある。(大統領選の)選挙戦中、ジョコウィ氏に最も近かったのがアニス氏だ」と話し、アニス氏当確後、実際に「安全で発展を続け、中傷のない国」になったとの見方を示した。
 カラ氏との関係について、アニス氏は「カラ氏には副大統領としてではなく、あくまで個人の立場から支援していただいた。ジョクジャカルタの自宅に遊びに来て、一緒に食事をしたこともある。家族の一員として付き合いを続けてきた」と話す。決戦投票で当確した翌日の4月20日朝、まず最初にあいさつに訪れたのもカラ氏の公邸だった。
 アニス氏は14年、ジョコウィ政権移行準備チームに参加、教育文化相として初入閣した。しかし昨年7月の第2次内閣改造で解任されたため、ジョコウィ氏との間には確執が残るとの見方もある。
 一方、早い時期からプラボウォ氏の信頼を得てグリンドラ副党首に就任、当初の知事候補から副知事候補になったサンディアガ氏は、候補選出当時の舞台裏について「ハイレベルの政治なのでコメントできない」としながらも、「9月21〜23日の出来事については、秒刻みで私が最もよく知っている。適切な時期に書きたい」と話した。(配島克彦)

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