「気遣いできるおとなしい人」 金正男氏暗殺容疑 アイシャ容疑者の元義父

 北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏が暗殺された事件で、実行犯として逮捕されたインドネシア人のシティ・アイシャ容疑者(25)は、2007年ごろから西ジャカルタ区アンケで暮らし、華人男性との間に1人息子がいた。先月末もアイシャ容疑者と会ったという元義父は「気遣いができ、家事が上手だった」などと印象を語った。

 「1月28日に会った時は、痩せていて、せきをよくしていた。『病気だ』と言っていた」。アイシャ容疑者が12年に離婚した華人男性の父で、元義父にあたるアキオンさん(55)は、突然の事件の知らせに驚いた様子だった。
 アンケの住宅密集地の狭い路地にある、外壁の塗装が剥げかかった一軒の住宅。ここで衣料品製造業を営んでいたアキオンさんは07年ごろ、仕事を探していたというアイシャ容疑者と知人の紹介で出会い、住み込みの家政婦兼店番として雇い入れた。「いつしか息子と親しくなり、結婚した」。夫はキリスト教徒だが、容疑者の地元バンテン州セランで、容疑者の宗教であるイスラム式の結婚式を挙げたという。
 09年には息子を出産。翌年には息子をアキオンさんに預け、夫婦で仕事を求めてマレーシアに渡った。しかしその後、夫のみが帰国、夫婦は離婚した。アキオンさんは詳しい離婚理由について言葉を濁したが、「嫉妬していた。まだ若かった」などと説明した。容疑者は「(夫には)一家のあるじが務まらない」などと話していたという。「2012年1月1日をもって、妻、シティ・アイシャに離婚を言い渡します」という夫直筆の書類も保管してあった。
 離婚後も、容疑者は祖父の元で暮らす息子に会うため、アンケのアキオンさん宅へ何度か足を運んだという。一度は、「仕事は何をしているのか」と尋ねると、「(リアウ諸島州)バタムで働いている」と答えたという。
 最後に息子に会いに来たのは事件の約2週間前の1月28日だった。病気のように見えたという容疑者は、1泊し、翌29日朝に帰った。行き先は告げず、それ以降は連絡も取っていない。7歳になる容疑者の1人息子は現在、アキオンさんの引っ越し先の西ジャカルタ区ベベックで暮らす。「あの子は両親が離婚したことをまだ知らないし、母親はバタムで働いていると思っている」。
 容疑者がアンケに住んでいたのは、10年ごろまでの約3年間。近隣住民は、「名前も知らなかった」と口をそろえた。容疑者は近所付き合いをあまりせず、あいさつを交わす程度だったという。
 容疑者が暮らしていた家の真向かいに住む、隣組(RT)長のユスリルさん(48)は「田舎育ちの、素朴な子。良い人だった」と容疑者の印象を話した。ユスリさんの記録帳によると、09年12月29日にはアイシャ容疑者から出生届を受理。自宅の前で子どもにご飯を食べさせる様子なども見かけたが、「あまり皆とコミュニケーションを取らなかった」。「おとなしい人」だったという容疑者の犯行が信じられない様子だった。(木村綾、アリョ・テジョ)

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