【ジャカルタ知事選 三つどもえの戦い(中)】 賛否両論の改革派  チェック柄で再選目指す 現職 アホック氏

 毎週水曜の朝、中央ジャカルタ・メンテンの閑静な住宅街が、そろいのチェック柄シャツに身を包んだ人たちであふれかえる。
 「ルマ・レンバン(レンバンの家)」と呼ばれる、現職バスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)氏(50)の選対本部。週1回、アホック氏と住民の対話の場として開放している。
 チェック柄シャツはアホック陣営のトレードマーク。2012年のジャカルタ特別州知事選で、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)氏とアホック氏が着たことに始まる。
 選対本部前の通りは現在、グッズ売り場と化している。チェック柄のシャツや帽子を売るシャフバンディ・アンディさん(35)は支援者の1人。水曜日は1千万〜1500万ルピアを売り上げる。「以前は大雨が降ると2時間で洪水になっていた。今は3日間雨が降っても洪水が起きない」。ジャカルタに暮らして15年、確かな変化を感じた。
 「アホック知事になって洪水がなくなった」との声は多い。川沿いの住宅撤去による川幅拡張や川の清掃を断行。洪水対策に成果を上げる一方で、住民が強制撤去に反発、今回の選挙でも攻撃材料となった。
 選対広報によると、選対本部には1日1500〜2千人が訪れる。アホック氏との面会は登録制で午前8時ごろから。希望者は午前4時から列に並ぶ。
 有権者だけでなく、地方から足を運ぶ人もいる。北スマトラ州メダン市の会社員トガップ・シマンジュンタックさん(61)は州政改革を進めた知事の透明性を評価。「北スマトラは汚職の温床。ジャカルタが良くなることは、インドネシアが良くなることにつながる」と話す。
 1月中旬、オレンジ色の作業着を着た東ジャカルタ区の清掃員14人も姿を見せた。「13年から清掃員を務めてきたのに、1月3日に雇用契約が打ち切られた」。清掃員のスアジさん(49)はアホック氏に直訴しに来た、と明かした。
 住民の陳情対応もアホック氏の政治スタイルだ。選挙前は州庁舎のロビーで毎朝、住民の陳情に応じるのが日課だった。
 他の2候補が締め切り直前に出馬を決めたのに対し、アホック氏の動きは早かった。知事就任から約半年後の15年6月には、同氏の再選を目指す市民団体「トゥマン・アホック」が始動。100万人分の署名を集めて無所属出馬に備えたが、4政党が続々支持を表明。州議会の半数以上の議席を占める4党の公認を得て、スタートで優位に立った。
 時に強行な姿勢や過激な言動が賛否を巻き起こしてきたアホック氏。立候補直後には、コーラン侮辱発言から大規模な反アホック運動に発展した。宗教冒とく罪で起訴され、「被告」として投票日を迎える。選挙運動の傍ら毎週火曜の公判準備に追われ、順調とは言いがたい戦いだった。
 首都初の華人の知事が起こした改革は、吉と出るか。支援者で会社員のデディー・アルジャンシャさん(49)は「長い間、大統領や知事が誰か、気にも留めてこなかった」と話す。「だけど今はクリーンな政治や子どもたちの未来に希望が持てる。アホックが負ければ、また暗黒の時代に逆戻りだ」(木村綾、写真も、つづく)

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