火災乗り越え商い再開 スネン市場 格安販売、8割引きも
「3枚で2万ルピア! 安いよ!」「タフゴレン(豆腐揚げ)と同じ値段!」――。商人の威勢の良い掛け声があちこちで響く。大規模火災が19日に発生した中央ジャカルタのスネン市場では22日から、燃えたブロック1の前にあるクラマット・ブンドゥル通りと、ブロック2の建物前で商いが再開された。火災を免れた格安商品が並び、移転までの一時販売所としてにぎわっている。
23日昼すぎ、商人は火災後に残ったり、煙の中から運び出したりした商品を低価格で販売。ブルーシート上やフェンスにかけられたジャケットなど、洋服や財布、ベルト、ブランケット、マットなどが所狭しと並ぶ。ほとんどの商品が2〜5割引きだが、最大8割引きや、購入枚数が多いほどお得な商品もあった。
衣類を扱うデリさん(43)は、普段は5万ルピアのポロシャツなどを、2万〜3万ルピアで販売。「品物が汚れてしまい安く売らざるを得ない。今後はブロック5に移転するが、2〜3カ月後になるだろう」と話した。
同市場は日本や中国、韓国などからの輸入品が集まる市場で、「質の良いものを安く買いたい」と大勢の客が訪れ混雑。火災後は、大幅な値引きがあるとのうわさを聞きつけ、遠方から駆けつける主婦らが増えたという。
「1日中働いているが、外は暑くて疲れる。スリも多いようだから気を付けて」と話すバラさん(28)はマットやタオルなどを販売。一部商品が辛うじて燃えずに残ったが、安い商品ばかり。値打ちのある商品はすべて燃えてしまったという。
ジャカルタ特別州政府によると、火災でブロック1と2が燃え、計約1500店舗が焼失した。移転先として、ブロック5の1階と2階の改築を急いでおり、工事は2カ月ほどで終わる予定だという。
同州のスマルソノ知事代行は23日、「商人は生きるために稼がなければならない」と路上などでの販売を特別に許可。周辺道路が渋滞しないよう交通整理を続ける。
ブロック5での営業再開を目指す店主が多い中、「店を持っていなかったため、移転先のブロック5に店を構えることはできない」と途方に暮れるのはアルティリアさん(48)。ブロック2出口付近のスペースで洋服を販売してきたが、火災の影響でこのスペースと商品の多くを失った。中央ジャカルタにある繊維市場のタナアバン市場周辺での販売も考えたが、新たに入り込む場所はなかったという。
アルティリアさんは「交通整備などが進み、道路沿いでの販売は難しいし、客も来ない。カキリマ(屋台)をひいて服を売るというアイデアはあるけれど、今後どうなるかは不安なまま」と話した。(毛利春香、写真も)