禁止法案で攻防続く たばこ大国のテレビ広告

 男性の喫煙率が世界1位のたばこ大国インドネシアで、たばこのテレビ広告を原則禁止にする法案が国会で審議されている。非政府組織(NGO)は、国際的な広告禁止の流れや、未成年の健康への影響などの観点からたばこ規制の必要性を訴える。一方、巨額の売り上げ、広告費を維持しようとする業界の反発は強く、綱引きが続くことは必至だ。   

 法案は2009年施行の保健法や、たばこの箱に喫煙の危険性を示す警告表示を義務化した、たばこ規制に関する政令(12年109号)を基に、たばこの販売促進を目的とするテレビ広告を原則禁止する内容。
 背景には、喫煙者の半数が未成年からたばこを吸い始める状況があり、テレビ広告禁止で未成年の喫煙まん延に歯止めを掛ける。
 NGOのインドネシア消費者協会(YLKI)トゥルス・アバディ会長によると、世界約150カ国では、たばこのテレビ広告が禁止されている。同会長は「我が国はテレビ広告を行っている数少ない国だ」と嘆き、広告規制の必要性を訴える。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)域内では、シンガポールが1971年に禁止したのを皮切りに規制の流れが強まった。ブルネイ(76年)、マレーシア(82年)、タイ(89年)などと続き、2011年のカンボジアで、インドネシアを除く全9加盟国でテレビ広告が禁止された。
 世界的な取り組みでは、世界保健機関(WHO)のたばこ規制枠組条約(FCTC)の批准国はたばこの広告禁止が原則義務付けられているが、インドネシアはいまだ批准していない。

■たばこ広告はドル箱
 世界的な潮流に逆らう形で、たばこの広告規制がインドネシアで進まないのは、売り上げ増を狙うたばこ業界、巨額の広告収入を維持したいテレビ各局、財源を失いたくない政府の思惑が一致するためだろう。
 16年のテレビ広告費は総額6兆3千億ルピア。広告の種類別では、食料品や化学製品などに続く5番目の巨額さだ。銘柄別では、ジャルムの1兆9千億ルピアがトップで、ガラム、サンプルナが続く。
 インドネシア大学が12年、テレビ局10局を対象に行った調査では、4カ月間に25ブランドのたばこの48種類の広告が放送されたことが確認された。広告業界における存在の大きさがうかがえ、ジャルム社幹部も「テレビ広告は最も効果的な宣伝手法だ」とテレビ広告へのこだわりを見せる。
 政府内でも、工業省が年間1400億ルピアの税収やたばこ産業の維持、育成を理由に広告規制に反対している。
 テレビなどの広告が規制されない状況下、インドネシア人男性の喫煙率は「高止まり」を続けている。WHOの統計によると、15年現在は76.2%で世界1位。12年の71.8%から5ポイント近くも上昇した。女性は3.6%(15年)。(平野慧、写真も)

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