【アルンアルン】2017年のインドネシア展望

 2017年は、米国でトランプ政権が始動し、欧州の主要国で選挙が相次ぎ、それらの変化がアジアや中東にも影響を及ぼす波乱含みの年になりそうだ。インドネシアはこうした情勢変化の直撃を受ける位置にはないものの、間接的な影響はあり得るし、直接関連のない外的ショックでも一時的な資本流出が起きるリスクには常につきまとわれるだろう。
 国内の調査機関や、世界銀行、国際通貨基金(IMF)などの国際機関は、今年のインドネシア経済は上向くと予測している。国内総生産(GDP)成長率は14年から3年連続で5.0%前後に低迷している。失業と貧困は何とか悪化せずにはいるが、大人口の雇用を確保するには5%台半ば以上に成長を引き上げることが必要だ。
 上向き予測の理由には、財政投資拡大やビジネス環境改善に向けた政策努力、個人消費の動向を示す消費者信頼度指数の上昇などが挙げられている。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権は、野党の優勢、与党との確執といった逆風から始まったが、15年8月の第1次内閣改造で体制を整え、同9月から経済政策パッケージを打ち出し始めた。16年7月の第2次改造では財政改革の切り札としてスリ・ムルヤニを財務大臣に据えた。中央銀行も16年後半には成長を後押しする姿勢を鮮明にした。
 16年末のインフレ率が例年になく低かった一因に、国内の東西海上交通の改善が指摘されている。インフラ投資を始めとしてジョコウィ政権が前半期に仕込んだ各種政策が、17年からの後半期に効果を現すことが期待されている。
 17年の成長展望に水を差しかねないのは、政治社会面の動きだ。一つは、2月の統一地方首長選挙、とりわけジャカルタ特別州知事選挙である。華人でキリスト教徒のバスキ・プルナマ(通称アホック)現州知事のイスラム冒とく疑惑をきっかけに昨年11月と12月に民主化後最大規模のデモが発生した。ジョコウィ大統領は珍しく危機感をあらわにして事態の鎮静化に奔走した。
 この問題には、この国のアキレスけんである宗教とエスニシティー、さらに次期大統領選をにらんだジョコウィへの対抗勢力の策動が絡んでいるともいわれる。もう一つは、過激派組織イスラミック・ステート(IS)に関連したテロ活動である。警察の捜査能力は高く摘発が相次いでいるが、活動家の増殖も速い。今後シリアのISが追い詰められる局面になれば、戦闘参加者の帰国や国内支持者が増えることも予想される。常に注意が必要だ。(佐藤 百合氏・JETROアジア経済研究所理事)

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