訪日35万人時代へ 「一生に一度」から「年に一度」に JNTO 冨岡秀樹ジャカルタ事務所所長に聞く

 インドネシアからの訪日客は右肩上がりで増えている。2016年は10月末時点で15年の年間訪日客20万5千人を上回った。さらに、閑散期とされる11月は54・3%と驚異的な伸び率を記録し23万人を超え、12月を合わせると前年の3割強増の27万人に達する勢いだ。同じ伸び率なら17年は年間35万人が期待される訪日客について、日本政府観光局ジャカルタ事務所(JNTO)の冨岡秀樹所長に聞いた。
 ――日本の位置づけは? 冨岡所長 インドネシアの海外旅行客数は年間800万人前後で横ばい状況。その中で訪日客は大きく増え続けている。日本に行くということが、インドネシアの人々の中で、優先順位の高い、魅力的なものと位置づけられている。
 シンガポールやマレーシア、そして次の旅行先として、日本が認識されるようになった。以前はチケットは高く、ビザの手続きも煩雑な日本への旅行は、一部の金持ちが行くものというイメージがあった。「一生のうちに一度行けたら」と言う日本が、所得の増加に加え、ビザの簡略化や格安チケットがあり、「年に一度」が手の届くところまできた。
 ――最近の特徴は?
 海外個人旅行者(FIT)が急増している。正式な調査結果ではないが、FITは全体の7〜8割を占める。訪日客の旅行先第1位は、ゴールデンルート(東京、富士山、関西)で、これは団体旅行もFITも一緒。そして、ゴールデンルートは多くのリピーターが訪問する。公共交通の便も整っており、ジャパン・レール・パスを使えば外国人も動きやすい。
 ――ムスリム対応は?
 訪日客の内訳は中華系が75%を、ノン・ムスリムが8割近くをそれぞれ占める。インドネシアのムスリムは、比較的寛大で柔軟な人々が多く、厳格な対応に神経質になることはないと講演などで伝えてきた。しかし、これからは厳格なムスリム訪客にどう取り組んでいくのか、日本では不明な部分が多く難しいが、今から始めないと手遅れになる可能性がある。食事の仕入れ先は、お土産品の表示は大丈夫か、考えないといけないことは多くある。
 ――最近の傾向は?
 訪日旅行の年間推移を見ると、ピークシーズン(繁忙期)は桜の季節と6〜7月の学校休暇、レバラン休暇(16年は7月初旬)、年末の学校休暇時期と言われ、そして、1月の休み明けから2月、レバラン明けから11月がローシーズン(閑散期)とされてきた。それだけに昨年11月の伸びは、大きな変化と受け止めている。
 「日本の秋」のプロモーションが実を結んだこともあるが、訪日旅行者層が、子どもの休みの時期に縛られる家族旅行者だけでなく、休みを調整できる自営業者や時間に余裕のある富裕層の主婦グループ、独身で比較的休みが取りやすい若手社員などの層が拡大しており、そこにうまくリーチした。
 また、紅葉などの自然の美しさに加え、海の幸、山の幸など、四季の中で食べ物が一番おいしい「日本の秋」という季節は、新しい魅力として受け入れられた。
 ――今後の目標は?
 訪日客が35万人超えを意識するあたりから、航空機の輸送キャパも考慮する必要があるかもしれない。
 18年には、日本インドネシア国交樹立60周年を迎える。日イ交流のためにも、ことしはさらに訪日旅行者増に向け努力していきたい。
 冨岡 秀樹氏(とみおか・ひでき)米国ミネソタ州立大学文学部卒。1989年国際観光振興会(現JNTO)入り。一貫してインバウンド(日本向け)観光促進に従事。ロサンゼルス、バンコク事務所次長、シンガポール、ロンドン事務所長を歴任。インバウンド戦略部、調査・コンサルティング担当部長などを経て2015年9月から現職。52歳。京都府出身。(聞き手・太田勉、写真も)

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