【じゃらんじゃらん】「千の島」へ 増え続けるホームステイ プラウスリブ県 クラパ島とハラパン島

 北ジャカルタから船に揺られてさらに北へ北へ。「千の島」の意味を持つジャカルタ特別州プラウスリブ県の島々が見えてくる。インフラ開発が進むクラパ、ハラパン両島では、自宅を宿泊場所として貸し出すホームステイを始める家庭が増えている。リゾートのような豪華施設はないが、観光業を家業とするための試みが続く。
 北ジャカルタ・スンダクラパ漁港から出た定期船は、約5時間半かかって島に到着した。クリーム色の立派な郡庁舎が見える。庁舎裏の1本道を進み、左へ曲がるとクラパ島、右はハラパン島。両島は実際は地続きで、東西1キロほどになる。
 島内は幅1・5メートルほどの狭い道が張り巡らされ、大人3人が通るのがやっとだが、ジャカルタから運んできたオートバイが我が物顔で走っている。左へ曲がった道沿いをしばらく行くと、両島に唯一あるサッカー場に出た。
 そのすぐそばには2015年11月にオープンしたコテージ「ロイヤル・アイランド」がある。ゼネラルマネジャーのムハマド・シャイフさん(46)は以前、プラウスリブ・パンタラ島の日系リゾートレストランでスーパーバイザーを務めていた。日本人からは「遅れないこと」「自己管理」を教わったという。
■自前の埠頭
 コテージは4種類12部屋で1部屋に2〜35人まで宿泊でき、自前の埠頭(ふとう)にボート、シュノーケリング用具、バナナボートにバーベキューなどの設備をそろえる。観光客はインドネシア人が多く、外国人はジャカルタで働く人ばかりという。シャイフさんはタオルや歯ブラシ、スリッパを部屋に置くなど外国人のニーズに応え、「国外から直接客が訪れる島初のリゾートにしたい」と目標を掲げた。
 また、クラパ島は現在「リゾートとは言えない状態」とシャイフさん。ホテルはなく、宿泊施設は全てホームステイ形式。観光客が増え始めた12年ごろから、ホームステイを営む家庭が増え始めたという。
 中央統計局(BPS)の15年統計では、クラパ島の島民は1850世帯6438人、ハラパン島は552世帯2262人。シャイフさんによると、クラパ島では約300世帯、ハラパン島はほぼ半数がホームステイを営んでいるという。シャイフさんの知人ダマンシャさん(29)も12年にホームステイを始めた。
 ダマンシャさんは11年に結婚。自宅以外に最大15人が寝泊まりできる2軒のホームステイ用の家を、出身地のクラパ島に12年に建てた。島に多いという公共事業の作業員として転々としながら貯金したが足りず、建設費計2億ルピアは借金でまかなった。「副業にしたかった」と決断理由を語る。現在は州清掃局員と観光業の二足のわらじを履いている。
 ホームステイは1泊20〜35万ルピア。焼き魚など食事のリクエストにも応じる。1日40万ルピアで船を借り、パンタラ、セパ、プトリなどダイビングができる周辺のリゾート島にも足を伸ばせる。
 近所の人たちとの夜の井戸端会議が毎日の楽しみというダマンシャさん。ホームステイを経営する友人や仕事場の仲間が「島では漁師と公務員ぐらいしか仕事がない」などと口々に不満を漏らしていた。
■海水から真水も
 州政府は08年から島周辺にマングローブを植え始めた。11年から電気を24時間使えるようになった。さらに、海水に圧力を加えて淡水にする「海水淡水化逆浸透膜(SWRO)」を使ったろ過装置がプラウスリブ県の8島にことし完成。クラパ、ハラパン両島では1日に約90万リットルの真水が作られる。クラパ島では1人1日約140リットルが割り当てられる計算。90リットルあれば風呂、炊事洗濯、飲料がまかなえるという。
 ダマンシャさんは「2年後にはホームステイが黒字になる。インフラ整備が進み、観光が島の産業になってほしい」と願いを込めて話した。(中島昭浩、写真も)

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