「平和」の意味問う イスラム団体合同祈とう集会
「超平和な集会を」と宣言し、行われた2日のイスラム団体主催の合同祈とう集会。時折強まる雨に打たれながら、多くの参加者は「(宗教冒とく罪で起訴された知事の)アホックを逮捕しろ」と叫び、「正義」や「ジハード(聖戦)」を口にした。「イスラムと他の宗教は平和に共存してきた。しかし(キリスト教徒の)アホックのせいで平和的でなくなった」と語気を強める参加者も見られ、「平和」「共存」の意味をあらためて考える機会となった。
午前8時、中央ジャカルタのタムリン通りでは、集会参加者が声を上げながら、モナス(独立記念塔)広場へ向かって列をなしていた。
広場周辺には地方からの大型観光バスが駐車した。南スマトラ州パレンバンからバスで24時間かけてやってきた香水売りのアブドゥルカリン・ムハンマドさん(46)は「アホックは容疑者になったが、逮捕はされていない。正義を求めてやってきた」と話した。
反アホック氏の抗議活動に初めて参加した銀行員、エルサ・プリスティアティさん(54)は「イスラムを守るジハード」と集会の意義を説く。
大学生の妹(20)と集会に参加したベティー・ロイヤニさん(46)は「イスラムと他の宗教は平和的に共存してきたが、アホックがジャカルタを率いているせいで、平和的でなくなった」と主張。「宗教が違っても私たちは一つのインドネシア。だけど、他の宗教の信仰に干渉してはいけない」とアホック批判を続けた。
一方、中央ジャカルタのサリナデパートで買い物をしていたロベルト・ロウヘナペシィさん(57)は「ジャロット副知事はムスリムなので嫌われることはないが、アホック知事はキリスト教徒なので、その発言のために嫌われてしまう。集会がいかに平和に行われようと、私は賛成しない」と疑問を投げかけた。
それまでぽつぽつと降っていた雨が大降りに変わったのは午前11時40分ごろ。集会のメーンイベントであるズフル(昼の礼拝)が始まったころだ。
さらに参加者の一部は、終了予定の午後1時を過ぎてもタムリン通りを闊歩(かっぽ)。「アホックを捕まえろ」と叫ぶ街宣車と、それに合わせ歌い歩く姿が午後4時近くまで見られた。
しかし、治安部隊と集会参加者が対峙(たいじ)するような、緊迫した場面はなく、不測の事態に備えて待機していた警官らは一様に「これは平和ではなく、超平和(スーパー・ダマイ)だ」と話した。
集会の開かれたモナス広場周辺の各通りでは、ジャカルタ特別州清掃局が清掃にあたった。集会参加者らの残したごみ袋を拾い上げたり、こぼれた残飯や空のペットボトルなどを片付けた。
警備員から同局職員になって2年になる東ジャカルタ・カンプンムラユ在住のエディ・プルモノさん(52)は「集会で通りは汚くなってない。みんなが掃除をしてくれた。残ったごみを回収するのが私たちの仕事。ゴトンロヨン(相互扶助)の精神だね」と笑顔で語った。(木村綾、中島昭浩)