保護主義、反ムスリム懸念 親交ある実業家は祝福 トランプ氏勝利受け

 米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利したことを受け、インドネシアでは10日、同氏が掲げる保護主義や反ムスリムに懸念する声が相次いだ。重要な貿易国である米国への非石油ガスの輸出や環太平洋連携協定(TPP)の加盟、エネルギー政策変更など国内経済に与える影響のほか、イスラム諸国と新たな緊張が生じることを不安視。一方で、インドネシアでも不動産ビジネスを展開しているトランプ氏と親交のある実業家らは勝利を祝福した。
 9月の非石油ガスの輸出額をみると、インドネシアは米国への輸出が13億6千万ドルで中国、日本を抑えて最も輸出している国となる。近年の対米輸出額の前年比増加率も高く、資源中心の輸出だが、インドネシアにとって重要な貿易国であることは変わらない。
 トランプ氏は安い外国製品の輸入が米国の雇用を減らすとし、高い関税を課すと訴え、TPPに反対を表明してきた。2015年にオバマ米大統領とホワイトハウスで会談後、「3年以内のTPPへの加盟」を公言していたジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は9日、TPPについて問われ、「議論中だ」と述べるにとどめた。
 政策を実行するか定かではないが、「(将来的に)米国の保護主義政策は、インドネシアからの輸出にも影響が出る」(アグス・マルトワルドヨ中央銀行総裁)。
 トランプ氏のエネルギー政策が国内産業に波及するとする声も上がる。石炭など化石燃料の促進を掲げる同氏の政策に対し、石炭輸出国のインドネシアが恩恵を受けるとする見方もあるが、資源価格の上昇につながれば石油の純輸入国、インドネシアにとってインフレ率の上昇につながる懸念もある。
 コンパスは10日付オピニオン面で専門家の言葉を引用し、トランプ氏が米大統領選で勝利したことに対し「米国衰退の始まり」と見出しを立てて人権尊重の観点から警戒感を示した。
 民放ラジオ局エルシンタは9日に視聴者約千人を対象に実施した世論調査で、86%が民主党のクリントン氏の勝利を望んでいたとする結果を発表。理由は反ムスリムの言動を気にかける声が多く、「また米国とムスリムの国の間に緊張が生まれるのでは」(ムスリム女性、47)といった声や、強硬派団体のイスラム擁護戦線(FPI)の広報による「ムスリムへの政策は差別的だ」と懸念する声も上がる。(佐藤拓也)

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