未加工鉱石の禁輸緩和を検討 産業界が批判「不確実性増す」
ダルミン・ナスチオン経済調整相は2日午後、2014年1月に始まった未加工鉱石の禁輸措置に関する関係閣僚会議を開いた。エネルギー鉱物資源省のアルチャンドラ・タハル副大臣が禁輸政策の緩和を検討する方向で議論を進めているが、産業界から反発の声が挙がっている。
閣議にはイグナシウス・ジョナン・エネルギー鉱物資源相、アイルランガ・ハルタルト工業相、ヤソナ・ラオリ法務人権相が出席した。
未加工鉱石の禁輸措置は14年1月に実施後、一時的に輸出額の減少につながり、一部鉱石の国際市場価格の高騰を招くなど波紋を呼んだ。政府は未加工鉱石の禁輸により、国内で加工を義務付け、鉱石の付加価値化を推奨、近年中国企業などを中心にインドネシアへ製錬所の建設計画が相次いでいた。
鉱石禁輸の細則に当たるエネルギー鉱物資源相令(2014年第1号)では、銅や砂鉄など一部の鉱石に関し発布されてから17年までの3年間は条件付きで輸出を認め、製錬所を建設する猶予期間を付与。3年後の同年1月に、完全禁輸措置をとる内容となっていた。
完全禁輸を2カ月後に控えた現時点では、すべての鉱石の製錬所の稼働にこぎ着けられず、エネ鉱省のアルチャンドラ副大臣が「現時点での完全禁輸は時期尚早。一部産業に影響は必至」と17年1月からの完全禁輸の緩和・延長を提案している。
アイルランガ・ハルタルト工業相は2日、未加工鉱石の禁輸措置の施行で、ステンレス鋼に使われるニッケルの製錬所の建設が進み、来年のステンレス鋼の年間生産量が500万トンを超え、「中国に次ぐ生産国になる」と述べた。
禁輸措置の緩和について「銅などの鉱石の製錬所の建設も進んでいる。製錬所が完成していない鉱石のみに適用するべき」と話している。
産業界からは「ここでの方針転換は国の不確実な方針を露呈し、対外的に悪影響」(業界関係者)、「政府は政策に一貫性を示す必要がある」(インドネシア商工会議所、ロサン・ルスサニ会頭)などと批判が挙がっている。投資調整庁(BKPM)によると製錬所の建設を計画する中国企業は151社に上る。
ジョナン・エネルギー鉱物資源相は「きょうの会談では、具体的な方向性を詰めていない。年内に結論を出す予定だ」と話した。(佐藤拓也)