初のデングワクチン インドネシアでも承認 9〜16歳対象 アジアで2カ国目

 世界で初めて開発されたデングワクチンがインドネシアで承認され、16日以降、全国各地で順次販売開始している。これまで蚊に刺されないようにするしかなかったデング熱の新たな予防策として期待が集まる。

 デングワクチンはフランスの製薬会社サノフィ製の「Dengvaxia(デングワクシア)」で、医薬品食品管理庁(BPOM)が9月に承認した。アジアでは、フィリピンに次ぐ2カ国目の承認になる。
 対象は9〜16歳で、6カ月ごとに0.5ミリリットルを3回接種する。治験を担当したチプトマングンクスモ病院のスリ・レズキ・ハディヌゴロ医師(小児感染症)によると、「9歳未満の子どもへ接種するには、さらなる治験結果を待つ必要がある。17歳以上の大人への接種についても、承認を待っている状態」という。
 デングワクチンは2011年以降、デング熱の流行国である東南アジア5カ国と中南米5カ国の計10カ国で計3万件の治験を実施。インドネシアでは、デング熱が多い西ジャワ州バンドン、バリ州デンパサール、ジャカルタの3都市で計1870件の治験を行った。
 その結果、初期症状のデングに65.6%、入院が必要なデングに80.8%、出血やショック症状を伴う重症型の「デングショック症候群」に92.9%の有効性が示された。
 デングには4種類の血清型があり、2回目に感染したウイルスが1回目と異なる型だと、血液中の抗体が過剰に反応してまれに重症化する恐れがある。スリ医師は「ワクチンは4種類の血清型を含むため、一度感染経験がある人にも予防効果がある」として接種を勧めている。
 治験ではまた、10%以上の「高頻度」な副作用として頭痛、筋肉痛、接種部位の痛み、だるさ、無力症、発熱などの症状が見られた。10%未満の副作用は接種部位の赤みや腫れなどだった。「(接種後の)予防効果がどれくらい続くのかについては、長期の調査が必要で、まだわからない」(スリ医師)としている。

■1回130万ルピア
 25日に記者会見したサノフィのワクチン事業部、サノフィパスツール・インドネシアのジョコ・ムルディアント事業部長は販売価格について明言を避けた。接種可能な病院については、「大手病院ですでに導入済み。マラン(東ジャワ州)やジャンビ(州)など、ジャカルタに限らず地方でも販売している」とした。
 じゃかるた新聞が中央ジャカルタ区内の複数の大手病院に聞いたところ、接種料金は122万1700〜130万ルピアだった。
 インドネシアではことし1〜9月、デング熱の感染例が16万件に上り、前年同時期と比べて17%増えた。感染が増える雨期に向けて、新ワクチンの効果に期待が集まる。
 インドネシア小児科医協会・予防接種特別チーム長のチシー・カルタサスミタ医師は「研究が進み、乳幼児も打てるようになれば、将来は(ポリオやはしかと同じ)国家予防接種プログラムの一つとして普及されることも期待できるだろう」と話している。(木村綾、写真も)

デング熱
 
 熱帯・亜熱帯に広く生息するネッタイシマカなどの蚊が媒介する感染症。潜伏期間は3〜7日ほどで、発症すると高熱、頭痛、関節痛などの症状を伴うことが多い。インドネシア全土で感染が確認されており、2014年には日本でも約70年ぶりに症例が報告された。

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