国家予算の歳出超え 租税特赦の資産申告額 スリ財務相自ら説得

 未申告の資産に通常より20%以上低い税率が適用されるタックス・アムネスティ(租税特赦)の最低税率の適用が30日、締め切られた。3カ月弱の期間で申告額が2017年国家予算案の歳出額(2070兆5千億ルピア)を優に超え、3481兆ルピアに達した。申告額に対し、国内へ還流する額が少ないとの指摘が上がるが、政府はことしの目玉政策はひとまず成功したとアピールしている。

 税務総局は30日、すべての銀行の取引時間を従来の午後3時から同9時まで延長するよう指示。税務署に資産報告書と納税証明書を午前0時まで提出できる態勢を整え、金融機関と連携して1次締め切りの最終日を迎えた。
 納税者は、17年3月末まで段階的に引き上げられる特赦法の最低税率の適用期限を30日に控え、期間内に納税しようと午前5時から税務署に行列ができるほど駆け込み申請が続いた。
 税務総局は過去に租税特赦を実施してきた各国と比較。資産申告額、税収額ともに過去に実施してきた各国をほぼ上回っている「実績」を示した。
 プラモノ・アヌン内閣官房長官は30日、記者団に租税特赦の成功理由を説明。「ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が全国各地を回り、直接租税特赦の周知活動を行ってきたことで国民の信頼を得られた。次に財務省の規定改正など臨機応変な対応。そして連日対応してきた税務署の職員だ」と繁忙を極めた税務署の職員を労った。
 租税特赦法を主導してきたスリ・ムルヤニ財務相による働きかけを称賛する声も上がっている。
 9月下旬に入ると地元のテレビ局で、国内長者番付で常連の財閥のトップから、過去に犯罪歴のある大物実業家まで、税務署で資産申告書を提出し税務総局長と笑顔で会談する姿が、連日のように報道された。
 22日、イスタナ(大統領宮殿)で租税特赦の周知活動のために開かれたジョコウィ大統領と大物実業家との夕食会。大統領府は、スリ財務相が大物実業家に囲まれる写真を公開した。大物実業家は、たばこメーカー、ジャルムのロバート・ブディ・ハルトノ氏やスリウィジャヤ航空のオーナー、チャンドラ・リー氏などインドネシアを代表する経営者。29日に租税特赦を申請したアブリザル・バクリー氏、アリフィン・パニゴロ氏らの姿もあった。
 出席した経営者は地元メディアに、スリ財務相から「国家のために租税特赦に協力してほしい」と説得されたと説明。ある経営者はコンパスコムの取材に「夕食会に参加し、租税特赦法が成功すると確信した」と話した。
 1次締め切り日の30日には、インドネシア屈指の財閥、シナールマス・グループの創業者、エカ・チプタ・ウィジャヤ氏が税務署に足を運んだ。
 スリ財務相は同日、「申告額に対し、(インフラ資金の原資にもなる)国内への還流資産が少ない」と今後の課題を記者団に話した。申告額の政府目標は4千兆ルピアとほぼ達成している一方、資産還流額目標1千兆ルピアに対しては、135兆ルピアにとどまっている。(佐藤拓也)

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