「影響は限定的」 英大使が急きょ会見 英国がEU離脱決定

 英国の欧州連合(EU)からの離脱決定を受け、駐インドネシア英国大使が急きょ会見を開き、インドネシアとの外交関係が変わらず強固なことを強調した。為替はややルピア安、証券取引市場もやや下振れした。英国との貿易額やマクロ指標などの判断材料のもと影響は限定的といった見方が多い一方で、対インドネシアへの直接投資額が5位に達する英国からの投資が鈍り、経済成長の鈍化につながると危ぐする声が上がっている。
 英国のEU離脱が決定したことに対し、インドネシアの主要日刊紙は25日付紙面のトップで報道した。モアザム・マリック駐インドネシア英国大使は25日、南ジャカルタの大使館で急きょ会見を開き、「英国は(今後も)インドネシアと密接な関係を築いていく」と動揺を抑える姿勢を示した。
 EU離脱が決定した24日のインドネシア証券取引所(IDX)の総合株価指数(IHSG)の値動きは、一時前日比2・45%減少したが、終値は0・82%減まで持ち直した。同日のブルームバーグの対ドルレートは前日比1・08%安の1万3391ルピアだった。市場関係者は「マクロ指標が安定している。市場での影響は少ない」と話した。
 ユスフ・カラ副大統領ら閣僚は同日、相次いで発言。カラ副大統領は「われわれへの影響は大きくないが、各国で保護貿易主義が増える傾向にあるだろう」と説明。レトノ・マルスディ外相も、外交への直接的な影響は限定的との見方を示した。
 英国との間では昨年7月にキャメロン首相がインドネシアを訪問、ことし4月にジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が英国を訪問して首脳会談を行い、この1年間で海洋、教育、技術開発などの分野で計七つの覚書を結んだ。
 インドネシアとEUとの間では、包括的経済連携協定(CEPA)の交渉を始める方向で進んでおり、ジョコウィ大統領はたびたび早期締結とEUとの貿易拡大への意欲を示していたが、関係者からは「今後CEPA交渉が難しくなるだろう」と声が上がっている。トマス・レンボン商業相は24日にCEPA交渉に関する記者会見を開く予定だったが、急きょ取り止めた。理由は明らかにしていない。
 中央銀行のアグス総裁は「現在英国との貿易額はそれほど大きくなく、影響は限定的」と話した。インドネシアから英国への輸出額は全体の1%未満にとどまる。EU離脱でCEPA交渉の枠組みから外れ、今後英国との2国間で貿易協定の見直しが迫られそうだ。
 欧州経済に詳しいインドネシア商工会議所(カディン)のクリス・カンター氏は25日、地元メディアの取材に「英国離脱で最も影響するのは、直接投資の実行速度が鈍ること」と説明した。英国の対インドネシア投資額は、租税回避地の英領ヴァージン諸島を含めると合計約12億3300万ドル(2015年)でインドネシアにとって5番目の投資国に入る。インドネシアの経済成長を支える直接投資に影響を与える可能性があると指摘。企業経営者に英国の規制変更などに注視するよう呼びかけた。(佐藤拓也)

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