ごみゼロを目指して 徳島・上勝町の活動紹介

 西ジャワ州デポックのインドネシア大学(UI)日本研究センターと国際交流基金は17日、同大学でごみについて考えるセミナーを開き、「ゼロ・ウェイスト運動」を進めている徳島県上勝(かみかつ)町から来イしたNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーの理事長を務める坂野晶さん(27)が講演した。上勝町での活動からインドネシアでのごみ問題解決のヒントを得ようと、学生を中心に約200人が聴き入った。  

 「クリーンシティ・クリーンピープル」と題したセミナーで、坂野さんはインドネシアのごみ問題について「何から始められるかを考えることが大切」と話した。
 ごみ収集車が回収に来ない上勝町では、毎日開いている「ごみステーション」に住民がごみを持ち込む。生ごみはすべて家庭で処理し、その他のごみは34種類に分別する。持ち込まれたごみの最終的な行き先やリサイクルにより町に入る資金、処理にかかるコストなどがわかるようになっている。
 ごみステーションには生ごみがないため、悪臭はない。子どもからお年寄りまで誰もが訪れ、コミュニケーションの場となっている。さらに不要品を持ち寄り、無料でほかの人に引き渡す「くるくるショップ」や、古い着物などを高齢者がリメークした製品も販売している。
 現在、ステーションに持ち込まれたごみの77%がリサイクルされ、行政が負担していたごみ処分コストは3分の1に削減された。細かい分別が面倒なため、住民がごみの出る量が少ない商品を購入するように努めるようになるなど、環境意識も高まったという。
 セミナーに参加したUI日本地域研究科2年のアニサさん(24)は、上勝町を初めて知り、小さな町のごみ管理システムに驚いたという。「上勝町と比べジャカルタは人口が多いため、難しいが活用できる可能性はある。インドネシアでは分別を面倒に感じる人がほとんど。だからこそ少しずつ意識を変えるために、上勝町から学ぶべきだ」と話した。
 規模が大きい場合について坂野さんは、コミュニティーの規模に分解し管理することが一つの方法だと話す。「一人一人が自分のことだと捉えられるようにすることで、意識が変わる」と話す。
 学生からは、分別を維持する方法について質問が相次いだ。坂野さんは、ごみの中でも特に嫌なものとされる「生ごみ」とそうでないものを分け、行政は生ごみだけを回収し、他のものはリサイクルするようにする方法を提案。「生ごみをまず分けてなくすことで、汚れの少ないビンや缶をリサイクルしようとする意識が向くようになる。インドネシアが抱える課題と上勝町の抱えていた課題はほとんど同じ。上勝町でのプロセスや経験談から学んでもらえたらうれしい」と話した。(毛利春香、写真も)

◇ ゼロ・ウェイスト運動 人口1662人、うち半分以上が60歳以上の過疎高齢化が進む徳島県上勝町で2003年に始まったごみをなくす取り組み。もともと同町では野焼きが主流だったほか、二つあった焼却炉がダイオキシン問題で使用できなくなった。町に新たな焼却炉を建設する資金はなく、焼却せずに何とかごみをなくそうと始め、「2020年までに町内から出るごみをゼロに」と宣言。現在ではごみ処理や過疎高齢化地域活性化への最先端の取り組みの一つとして国内外から注目を集め、上勝町の人口を超える年間2500人が視察に訪れる。またこの3年間で町外の人によって同町で7社が設立され、企業誘致にも繋がっている。

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