経済連携協定に前進 大統領欧州歴訪 「開かれた市場」アピール

 インドネシアと欧州連合(EU)は包括的経済連携協定(CEPA)の交渉を始めるための基本構想(スコーピングペーパー)の部分で合意した。欧州を歴訪しているジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が21日(現地時間)、ベルギーのブリュッセルで欧州委員会のユンケル委員長との会談後、記者会見で発表した。大統領は各国の首脳や投資家に「インドネシアは開かれた市場」というメッセージを強く打ち出し、EUとの貿易拡大に意欲を見せた。

 ジョコウィ大統領はEUのユンケル委員長との合同記者会見で「CEPAを結ぶための議論は、ここ数年間棚上げされていた。今日から本格的に始める」と経済連携協定の締結へ前進したことを強調した。EUとのCEPA交渉は2011年ごろから始まっていたが、貿易範囲などの枠組みを決める交渉が難航していた。インドネシア政府は2年以内をめどに締結したい意向だ。
 大統領の訪欧に先立ち、トマス・レンボン商業相は今月上旬、EUを訪問。モノやサービスの貿易拡大の範囲や関税、知的財産など14項目の調整作業に入っていた。
 中央統計局(BPS)によると、インドネシアのEUへの輸出額は減少している。EUとの経済連携協定締結による経済効果は、インドネシアの輸出額を国内総生産(GDP)の約1.3%(約130兆ルピア)ほど押し上げる試算があり、協定を結ぶことで、欧州とのパイプをさらに強めたい考えだ。
 昨年末に東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)が発足し、ジョコウィ大統領は域内国での競争を意識。EUとの経済連携協定や環太平洋連携協定(TPP)など、高い水準となる自由貿易協定への参加に意欲を示している。
 今回の訪欧も経済連携交渉を優先事項に置き、各国首脳に伝えてきた。大統領は「CEPAを締結すればTPPに参加できる準備が整う。(現在の国際競争社会では)自由貿易協定への参加が不可欠だ」とした。
 17日にジャカルタを出発した約1週間の欧州歴訪では、EU内で最大の貿易国となるドイツや、欧州最大の港湾、ロッテルダム港を持つオランダのほか、英国、ベルギーを訪問した。ジョコウィ大統領は各国で首脳と対談したほかにビジネスフォーラムで演説した。
 ドイツの投資家の前では「ドイツのビジネスマインドは素晴らしい」と称賛。英国で開かれたフォーラムでは「世界経済は今、多くの課題を抱えている。わたしの意見はシンプルだ。冷静な視点で、インドネシアへの投資を考えてもらいたい」と呼びかけた。投資を呼び込むために、許認可の簡素化や外資の開放政策への取り組みも強調した。
 また、今回の欧州歴訪でインドネシアの死刑制度に関心が集まった。地元メディアによると、メルケル首相の会談後の合同記者会見で、ドイツの記者団から死刑制度について質問があり、メルケル首相は死刑制度反対を強調した。
 これに対し、ジョコウィ大統領は麻薬犯に対する死刑について言及。インドネシアで麻薬による被害者が多く、1日に40〜50人が麻薬により亡くなっていると説明、人権を尊重し、法の下厳格に執行する見解を示した。
 英キャメロン首相とも死刑制度を議論。英国首相官邸は、死刑制度に反対の声明を公表した。大統領は23日に帰国する。(佐藤拓也)

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