熱帯雨林で植物543種 リアウで九州大調査チーム採取 保護林以外の森は消失

 九州大学大学院理学研究員の調査チームが10〜17日、リアウ州シアク県の低地にある熱帯雨林を調査した。矢原徹一教授(61)は「インドネシアは世界一植物の多様性が高い一方、世界一速く森林が消失している」と警鐘を鳴らす。今回調査した1500平方メートル内にあった植物種は計543種で、生態系の維持のためにも、熱帯雨林の保護が大きな課題となっている。

 低地にある熱帯雨林での植物種の多様性を把握するため、種数や新種、絶滅危惧種の数を調査。5×100メートル(500平方メートル)の三つの範囲内で生態写真の撮影や標本の作製、DNA用のサンプル収集、4メートル以上の木は樹高と胸高周囲の長さを測定した。それぞれの範囲で329種、285種、248種の植物種が見つかった。日本で同様の調査を実施した場合、500平方メートル内で見つかるのは、屋久島の低地で100種、福岡の低地で70種ほどだという。
 数種が新種である可能性が高いが、これまでにスマトラ島で報告された2万種とマレー半島やインドシナ半島、カリマンタン島などの周辺地域の種を含む約10万種からグループ別に照合し、確認する必要がある。今回見つかった新種の可能性があるクスノキ科の植物は、東南アジア産の約600種と比較する。
■89%の森林消失
 スマトラ島の森林率は1985年の57%から2007年には30%まで低下。リアウ州では同22年間で89%の森林が失われた。現在はアブラヤシ農園やユーカリなどの広大な植林地ばかりで、アクセスが悪い一部の土地にしか熱帯雨林は残っていない。矢原教授は「低地の熱帯林がほとんど残っていないことに、あらためて衝撃を受けている。リアウ州では保護林エリア以外に森はほぼない」と話す。
 今回、調査対象となったのはシナールマスグループの大手国内製紙会社アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)社がリアウ州で保有・管理する約40ヘクタールの保護林の一部で、樹高40メートルに達する巨木が林立し、多様性も高い。一方、保護林周辺はアカシア・ユーカリの植林地となっている。
 インドネシアを含む東南アジアでは木材に利用するため熱帯雨林を伐採。その後、約50年かけて木材にできる新たな大木を育てるのではなく、3〜4年で収穫でき果実から良質な食用油が採れるアブラヤシや、5〜7年で製紙用のパルプ材に利用できるアカシアやユーカリ、5〜6年で天然ゴムを収穫できるゴムノキを植える。短期間で稼ぐことができる農地や植林地が増え、自然林は残らない。
 矢原教授は「国立公園や自然保護区、APP社などが管理する保護林が今後どれだけ守られるのかによって、インドネシアの多様な動植物の運命が決まると言っても過言ではない。熱帯雨林を守る企業ほど有利になる市場メカニズムが必要だ」と説明した。
 矢原教授は2015年4〜5月にも同地を視察。これまでに西スマトラ州パダン市の東部にあるガドゥット山や西ジャワ州にあるグデ・パンランゴ山国立公園などインドネシア国内の5カ所以上を調査。日本では「持続可能な社会のための決断科学センター」のセンター長も務める。(毛利春香)

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