タクシー vs 配車アプリ 5000人デモで都心閑散 政府  運営整備で対立緩和

 大手タクシー会社やバジャイ(三輪タクシー)の運転手ら約5千人は22日、中央ジャカルタの国会議事堂や大統領宮殿(イスタナ)前で、配車アプリタクシーの営業禁止を訴えるデモを実施した。これに対抗する二輪配車アプリのゴジェックの運転手も各地で集結し、投石するなど両者の小競り合いに発展した。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は双方に公平な措置を講じるよう関係閣僚に指示、合法的な運営体制を整備することで対立緩和を目指す方針を示した。

 大手ブルーバードなどのタクシーや乗り合いバス(アンコット)の運転手らが加入する陸上交通運転手組合員らは午前9時ごろ、中央ジャカルタ・スナヤンの国会議事堂前に集結、国会前のガトットスブロト通りを封鎖した。タイヤに火を付けるなどして気勢を上げ、通りかかったゴジェック運転手や配車アプリのグラブタクシーと提携するエクスプレスタクシーの運転手、警察官らを襲撃。また同通り沿いにあるグラブタクシーの看板を破壊した。
 スナヤンのスディルマン通りや南ジャカルタ・クニンガンのラスナサイド通りでは、デモに参加せず乗客を乗せていたブルーバードの車両を襲撃、運転手が軽傷を負ったほか、フロントガラスを破壊した。
 地元メディアによると、南ジャカルタ・セノパティ、テベット、バンテン州スルポン、西ジャワ州ブカシのハラパン・インダなど各地で、ブルーバード運転手がグラブタクシーやゴジェック運転手に襲いかかり、携帯電話を奪い取ってたたき壊すなどの暴力行為が報告された。
 これに対抗しようと、同日午後、ゴジェック運転手数十人がスナヤンのアジアアフリカ通りやクニンガンのラスナサイド通りなどにそれぞれ集結、ブルーバード運転手らに投石するなど乱闘に発展した。
 同日正午ごろ、デモ隊はスディルマン通り、タムリン通りを北上し、独立記念塔(モナス)広場にタクシーやバジャイを駐車し、通信情報省や運輸省、イスタナ前で配車アプリタクシー廃止を訴えた。
 警視庁は同日夜、計17台の車やオートバイが破壊されたと発表した。
 ブルーバードは本社で会見を開き、陸上運輸組合(オルガンダ)やブルーバード労働組合がデモを動員したわけではないと説明。大規模なデモ計画については事前に運転手に参加しないよう呼びかけていたとし、デモ参加者に現金を支給したなどのうわさも否定した。
■配車アプリは登録を
 ジョコウィ大統領は同日、タクシー会社と配車アプリタクシー両者に公平な措置を取るよう閣僚に指示した。ジョナン運輸相は、配車アプリは既存のタクシー会社も利用しており、新たな法令などは必要ないとしたうえで、配車アプリを運営する団体に対し▽協同組合や財団などとして登録する▽公共交通機関として登録する▽納税義務を果たす――ことを運営条件として挙げた。
 ルフット政治・法務・治安調整相はイスタナで、ルディアンタラ通信情報相や配車アプリ運営幹部らと協議した。その後の会見で「すでに数十万人の利用者がいる配車アプリへのアクセスを遮断すれば新たな問題が生じる」と指摘。「5年後にどのような技術的な変化があるか分からない」とアプリを擁護し、グラブタクシーがエクスプレスのアプリ改善を支援するなど、相互に協力していくことで共生を図ることもできるとの見方を示した。(配島克彦)

バジャイアプリは「失敗作」

 独立記念塔(モナス)広場にはデモに参加するタクシーやバジャイ、アンコット(乗り合いバス)、メトロミニ運転手が集結した。
 「新参の配車アプリはまず公共交通機関としての許可を取得すべき。不公平だ」。バジャイ(三輪タクシー)運転手のデディ・スリヤントさん(42)は語気を強める。
 配車アプリの登場以来、収入が激減した。所属会社から1日あたり15万〜20万ルピアを得ていたが、最近は3万ルピアほど。生活苦に陥った。
 ジャカルタ特別州運輸局は昨年10月、圧縮天然ガス(CNG)を燃料とする青バジャイ専用の配車サービスアプリ「BAJAI APP」をスタートさせた。当初は千人を超えるバジャイ運転手がアプリに登録、収入増を狙った。しかし、他の配車サービスが展開するような「州内どこでも1万5千ルピア」「新規利用者は無料」など、客を呼び込みリピーターを増やすためのキャンペーンもない。
 「アプリは単に走行距離に応じた料金を計算するだけ。客には高いと言われ、結局、昔ながらの値段交渉が始まる」。今ではアプリを使う運転手もほとんどいなくなったという。(山本康行、写真も)

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