土砂災害防ぎ緑地化 多機能フィルター活用へ 敷設だけで効果発揮 (2016年01月26日)

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 土壌を保護し緑化を促すフィルターを製造している多機能フィルター(本社・山口県下松市)は20日、中央ジャカルタの科学技術応用評価庁(BPPT)で研修会を開き、斜面や法面に張るだけで土壌の浸食を防ぐと同時に緑化を促す「多機能フィルターシート」をインドネシアで試験的に使用し、調査した結果を発表した。土砂災害防止や環境保全に活用できるとして政府も注目している。

 国際協力機構(JICA)の事業として実施し、バリ州のウダヤナ大学と山口大学、環境林業省の森林研究開発庁(FORDA)が協力。ポリエステルなどでできた不織布が素材の同シートは撥水(はっすい)効果を持つ繊維の集まりで、降雨の際には水を流す一方、土とは絡み合っているため土を流さない。さらに蒸散を防止し、土中の保湿率を上げるなど多機能な効果を発揮する。
 噴火の影響で荒廃地が広がるバリ州バンリ県のバトゥール山山麓では2012年、約2500平方メートルに同シートと、チークやギンネムなど樹木の種バッグを敷設した。同地は降雨による土壌侵食が続き、養分が少なく植物が育ちにくいが、15年の結果では土壌侵食を防いだだけでなく、菌根菌などの微生物の繁殖状況が改善。緑化が進んだ。
 ジャカルタ特別州内の工業団地や高速道の法面などにも同シートを設置。浸食防止と自然植生が促された。インドネシアでは法面は芝を植える対策がほとんどだが、雨期に土壌流出が多く発生。植えた芝が雨で流れてしまうこともあるが、同シートは成長を待つ芝生と異なり、敷設すればすぐ効果を発揮できる。
 14年3月にウダヤナ大学農学部の農場地内に完成した工場や研究所では、現地の素材を使ったシートの開発・生産にも着手。日本から調達した不織布にインドネシア現地の古紙や綿を混ぜたシートを製造し、バトゥール山で試験的に使用した。
 綿を使用したシートが土粒子の密着性がよく、浸食防止効果が高いことがわかり、現地の藁(わら)を編んで作ったネットと綿を使用したシートを開発した。ことし10月からインドネシア国内での販売を目指す。
 BPPTのウドゥレ防災局長は「土砂災害の軽減や環境保全につながるだけでなく、インドネシアで調達した素材で開発・生産できれば経済発展にも寄与できる」と評価。一方、急勾配の場所が多く、同技術がどこまで活用できるか、鉱山の跡地や河川、道路、農村などで引き続き調査が必要だとした。今後はBPPTとFORDA、エネルギー・鉱物資源省(KESDM)、公共事業・国民住宅省調査機関(PU)、バンドン工科大学(ITB)との6者共同で研究・開発を続ける。
 研修会には多機能フィルターの小池常太常務取締役やウダヤナ大学のスアスティカ学長、山口大学の三浦房紀副学長、インドネシア政府関係者ら約70人が出席した。(毛利春香、写真も)

インドネシアの原材料を使った多機能フィルターシートを手にする小池常務取締役(右)とスアスティカ学長
インドネシアの原材料を使った多機能フィルターシートを手にする小池常務取締役(右)とスアスティカ学長

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