日本のバスは なぜ壊れない 日野の技術者に聞く
ジャカルタではここ2年ほど、大型バスが炎上する事故が10件以上起き、最近はメトロミニの事故も相次いでいる。だが、そのバスが日本製だったという話はまったく聞かない。日本のバスはなぜ壊れないのか、インドネシアで大型バスの占有率が7割に上る日野自動車の関係者に聞いた。
「炎上するなんて日本のバスではありえませんよ」と話すのは、日本財団の技能ボランティア海外派遣協会からインドネシアのバス会社の技術顧問として派遣された小沼守さん(71)。
小沼さんは1960年、日野自動車に入社。車両整備の専門家として1969年にビルマ(現ミャンマー)に派遣されたのを皮切りに、インドネシア、ベトナム、フィリピン、ラオス、インド、中国、台湾、ロシア、米国、韓国など15カ国・地域で、技術指導を行ってきた。
2004年の退職後、技術顧問として派遣されてからはジャカルタに住む。「インドネシアのバス、トラックの保守・メンテナンスについては足掛け45年間にわたって携わってきた」と話す。
円借款事業で70年代に始まったプランタス川、ソロ川の開発計画やウォノギリダム建設など多くの大型公共事業の現場で日野製トラックが使われた。
「一番大事なのは車両の保守とメンテナンス。だから故障しないし、過酷な山地の環境に耐える。当時のトラックは今でも現役。現在、韓国が行っている公共事業現場でも日野のトラックが使用されている」と語った。
小沼さんは「日本人にとって技術とは心であり、魂でもある。私たちは単に自動車を作って売るのではなく、仏に魂を入れるつもりでやっている。アフターケアのサービスを、物を大切に扱うことを、インドネシアの人たちに教えてきた」と語った。
車両製造に当たる水谷登志郎・インドネシア日野自動車会長は「現地の状況に合った車両作りに苦心してきた。車両だけでなく、運行オペレーション、路線作成からメンテナンスまで指導している」と話し、ソフト面での人材育成にも力を入れていることを強調した。
インドネシア運輸省の国営バス・トラフィック・トランス社の大型バスは大半が日野製。水谷会長は「年内にさらに千台のバスを納める」と話した。(濱田雄二、写真も)