【アルンアルン】車リサイクルの共通理解を

 ジャカルタに本部のある東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)の研究プロジェクトとして自動車リサイクルの研究事業が行われた。座長として、今年4月にジャカルタ、8月にクアラルンプールで開催されたワークショップで、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、インド、日本の研究者や業界関係者と「自動車リサイクル」に関する意見交換を行った。「自動車リサイクル」といっても各国の関係者が関心を寄せている内容が大きく異なっていた。
 日本では、自動車リサイクル法が制定され、廃車を破砕して鉄スクラップを回収した残りかすであるシュレッダーダストや、エアコンのフロン、エアバックを適正に処理する仕組みが構築された。ASEAN(東南アジア諸国連合)やインドでは、廃車を破砕するシュレッダーはまだ導入されておらず、シュレッダーダストは発生していない。また、廃車から取り外されたエアバックも、稼動するかよくわからない状態で再使用されている。
 ASEANやインドの専門家が関心を寄せていたことの一つは、古い車をどうやったら廃車にし、自動車リサイクルに回させることができるかということであった。インドネシアの業界関係者は、渋滞がひどく車の数を減らしたい、大気汚染の原因になっている古い車を減らしたいという。中国やベトナムでは廃車年限を定めており、参考にしたいとのことであった。
 日本では、なぜ、まだ動く車も廃棄されるのかという問いが投げかけられた。日本では、自動車に関する税制や車検制度、車庫登録制度といった自動車に関連した各種の制度や、ガソリンの値段が高い一方、自動車の燃費が大幅に改善されてきていることなどが、廃車にするかどうかの消費者の意思決定に影響していると考えられる。安全性の担保や環境保護のための制度、税制なども、廃車という行為につながっていることに気づかされた。
 また、ワークショップとあわせて、解体施設や修理工場などの見学を行った。使用済み部品を洗浄・加修などを行ったリビルト部品を製造している日系のシャイン・インドネシア・アバディ社の見学も行った。多くの参加者にとって、リビルト部品製造工場の見学は初めてであったため、熱心に質問がなされていた。
 自動車リサイクルに関する関心事項が異なっている点や、業界関係者や専門家でもリビルトに関する知識がないといった点にみられるように、アジア地域内でさまざまな問題についての共通理解が十分にできていないと感じる。
 各国の関係者と対話を進め、何が問題なのか、どのような対策が必要なのかに関する共通理解を作っていくことが、経済統合が進んでいく中で必要になっている。(JETROアジア経済研究所新領域研究センター上席主任調査研究員 小島道一)

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