家政婦への暴力 被害の75%捜査進まず
インドネシアの家庭内労働者支援全国ネットワーク(JALAPRT)は8日、2015年に国内で家政婦(PRT)などを含む家庭内労働者への暴力件数が少なくとも376件あったと明らかにした。同様の事件は毎年増加している。376件の被害件数のうち75%は警察の捜査が進んでいない。
376件は住民からの情報提供やメディアの監視により発覚した数のみで、首都圏であるジャカルタ、ボゴール、デポック、タンゲラン、ブカシ(ジャボデタベック)地域では15年は129件が報告されている。被害内容は65%が賃金の未払いや暴力、監禁など。売春などの人身取引は35%を占める。現在、今月4日に発覚したハムザ・ハズ元副大統領の息子で開発統一党(PPP)のイファン・ハズ国会議員と妻のアムナ・スシロワティさんによる、家政婦への虐待事件が注目を浴びているが、氷山の一角にすぎないという。
捜査の遅れや事件が発覚しないケースが多い理由は、暴力行為などを繰り返す雇い主が事情聴取に訪れた警察官に対し、黙認するよう賄賂を使うケースが多いためだ。金を受け取った警察官が被害者に対し、雇い主と平和的に解決するよう説得を試みることもあるという。
さらに、JALAPRTのリタ・アングライニ・コーディネーターは14年に発覚した元警察署長マンギシ・シトゥモラン氏の妻であるムティアラ・シトゥモランが被告が数十人の家政婦を脅して監禁したうえ、人身取引をしていた事件で、地裁の判決が執行猶予1年だったことを例に挙げ、司法機関の対応を批判した。
一方で多くの被害者が、監禁状態に置かれていたり、雇い主に対する恐怖心を持っていたりすることから、自ら被害を公にできない。また、助けを求めることができる機関や団体などを知らない人がほとんどだという。
リタ氏は「10代で家庭内労働者として働く人が多く、法律などの知識を知らないことを利用し、雇い主らに脅されているケースもある。すべての労働者に人権があることを忘れないでほしい」と話している。(毛利春香)