事務所開設 訪日客は急増 JNTO 退任の石崎雄久所長

2014年に開設した日本政府観光局(JNTO)ジャカルタ事務所の初代事務所長を務めた石崎雄久所長が今月退任、帰国する。12年に初めて10万人を突破したインドネシア人訪日客は昨年、15万8千人にまで増加、経済成長鈍化を横目に今年も過去最高を大幅に更新する勢いだ。石崎所長は事務所の取り組みを通じて「訪日客の層や行き先が多様化した」と振り返った。
■増えた個人旅行
 インドネシアからの観光客誘致を本格化させたのは、事務所開設前の12年から。「新たな旅行先をどんどん紹介、現地旅行会社もそれに応え、訪日客は大幅な伸びを見せた」。それまで日本旅行といえば、東京〜京都〜大阪のゴールデンルートが一般的だった。
 訪日客の層も急速に変化している。数年前までは団体旅行や富裕層が中心だったが、それ以下の所得層の個人旅行が増えてきた。購買力上昇や格安航空券の普及、SNSなどでの情報増加が背景。JNTOもさまざまなメディアを使った情報発信に注力した。「富裕層ばかりだったのは3年前の姿。事務所に来る人は20代後半から30代前半の若者。月給千万ルピアほどの大企業に数年勤め、日本に個人で旅行に行く人が多い」。
■まだ大半は非ムスリム
 13年からはルピア安が進行し経済状況も悪化。消費者の財布のひもが固くなった。14年の訪日客数は前年比16%しか伸びなかったが、今年は昨年からの自治体と一体となったプロモーションやビザ条件付き免除が実を結び、上半期は前年同期比28%増と好調さを取り戻している。
 日本側の自治体も受け入れ体制を整備し始めている。特にムスリム誘致への関心が高まり、インドネシアのムスリム観光客に注目が集まった。ただJNTOアンケートでは日本へ旅行するインドネシア人の6、7割はまだ華人をはじめとした非ムスリム。現状は劇的にムスリムの割合が増えているわけではない。自治体が単独で売り込みに来る機会も増える中、「北海道や東京ほどの観光資源がない自治体は、近隣同士で観光資源をパッケージ化して誘致してほしいという地場旅行会社のニーズが高まっている」という。
 ただ「将来的にはムスリムの割合は増える」と確信している。「研修や報奨旅行など、自分の意志ではなく訪日する人の中には厳格な人もおり、本国とできるだけ同じ環境を用意する必要がある」と指摘する。
■今後はニッチな需要も
 事務所開設から退任までの成果を「合格だがベストでない」と評価する。「レバラン(断食月明け大祭)と年末、花見に偏る訪日時期の平準化や『お酒』『錦鯉』などニッチな需要に応えることができなかった」。人員を増やした新体制ではそれらの課題を克服していく。
 当初は13年6月に事務所を開設する予定だったが、14年3月まで伸びた。政府系機関のため投資調整庁(BKPM)の認可が取れず、所管の外務省でもなかなか許可が降りなかったためだ。内示は出ていても、日本の本部で過ごす日々が続いた。「不安で胃がきりきりした」と苦笑いする。
 8月3日付で本部の海外プロモーション部に移り、欧米やオーストラリアを担当する。「しばらく観光客誘致はアジア重視だったが、東京五輪やラグビーW杯に向け欧米に回帰する動きがある」と新たなチャレンジを見据える。
 【プロフィル】 1969年10月22日生まれ。京都府出身。同志社大卒業後、国際協力事業団(JICA)サウジアラビア事務所副所長を経て、ジョージワシントン大大学院で観光経営修士取得。2004年からJNTO職員。13年からジャカルタ事務所長。(堀之内健史、写真も)

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