さまよえる露天商 モナス・フードコート襲撃事件の背後にあるもの…

 中央ジャカルタの独立記念塔(モナス)広場南側駐車場に新装オープンしたばかりのフードコートで、襲撃事件が起きた。露天商たちが集まった新スタイルの食事場所として順調なスタートを切ったと思われたが、同じ露天商が犯人だったことが分かり、露天商たちの間で戸惑いや反発が生まれていることが判明した。

■木刀で襲撃
 事件が起きたのは先月20日午後7時過ぎ。広場東側のガンビル駅周辺の露天商ら約100人が、木刀のようなものを手に駐車場入口などから敷地内になだれ込んだ。フードコート内のテーブルや椅子をなぎ倒し、設置されていたテレビやWiFi(無線LAN)、看板、事務所やトイレの窓ガラスを破壊した。
 現場に居合わせた女性従業員は「モナスの方から人が押し寄せてきた。ずっとカウンターの下に隠れていた」と表情をこわばらせた。事件後、警察は露天商とみられる男女5人を逮捕した。中には妊娠中の女性も含まれていたという。

■対象外の露天商
 犯行グループは営業許可の登録申請が断られたため襲撃したと供述している。フードコートには飲食店や土産物、衣料品用に324区画が整備された。しかし、広場周辺を根城とする露天商は千人を超える。フードコートの管理者によると、登録申請の対象は「もともと駐車場内の特定エリアで営業していた露天商のみ、他は対象でない」という。
 事件の前の週、ガンビル駅周辺の露店は警備隊に強制撤去させられていた。居場所を求めた露天商らがフードコートに申請したものの、「対象外」として拒否された。対象エリアの露天商には完成前に規則や登録方法に関する説明会が開かれたが、それ以外の広場周辺にいた露天商たちには登録できないことなどの説明は一切なかった。

■買った人にも罰金
 モナス広場はジャカルタを代表する観光地。平日2千〜3千人、週末や祝日だと5千人以上が訪れる。レバラン(断食月明け大祭)ともなれば1万人が訪れることもあり、露天商にとっては絶好の立地だ。
 広場周辺では以前から営業を巡って警備隊とのいざこざが絶えなかった。売春婦やプレマン(チンピラ)が横行したこともあり、2002年には広場周辺に高さ2・5メートルの柵を設置。07年には州令で公共の場での営業は禁止され、違法営業の露天商から購入した者にも罰金(20万ルピア)が課されるようになった。

■傷だらけの営業
 「モナスはみんなのものだった。柵もなく、自由に行き来できた。今は(夕方以降は)入り口が一つしかない」。32年間広場でコーヒーやたばこを売ってきた女性は途方に暮れる。広場を閉め出され、ガンビル駅前で営業を続けてきたが、もう居場所がないという。 左腕の袖をめくり上げ、警備隊の監視を逃れて柵を越えた際に鉄条網でできた傷を見せてくれた。パトロールが来るたび、柵のすき間から外にいる仲間に子どもを渡すことも。露天商たちは居場所を求め、警備隊の監視の目をかいくぐって、営業を続けてきた。

■怒る知事、警備増強
 アホック知事は1日、事件を受けて「露天商を一掃する」と発言した。肝いりで完成させたフードコートへの襲撃に対し、怒りをあらわにした。一方、特別州の中小企業・貿易局は2日「広場周辺に残る露天商向けの複数の場所を検討している」と述べた。
 警備隊は事件後、警備増強のため、平日100人、週末と祝日には300人の体制を敷いた。広場から警備隊が引き上げる日没後、ガンビル駅近くの入り口の前に露天商たちが集まり始める。営業は今も続いている。だが、明日も続くかどうかの保証はない。(中島浩昭、写真も)

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