「50億ルピア枠を歓迎」 「一般物件も高騰影響」 外国人の不動産所有に賛否

 ジョコウィ大統領の賛意で、外国人の不動産所有に向け一歩前進した規制緩和。政府は周辺国より一層の好条件を検討している。業界には歓迎の声がある一方、政策の実効性に懐疑を持ち、不動産全体の価格高騰を懸念する見方もある。

 6月下旬、大統領に直接提言したインドネシア不動産協会(REI)のエディ・フッシー会長は、インドネシアの経済が低迷する中、規制緩和による経済効果は大きいと強調する。
 REIはこれまで、100億ルピア(約9300万円)以上の分譲マンションなどの高級物件を外国人が所有できるよう提案。1万件の需要が見込め、100兆ルピア規模の新しい不動産市場が生まれるとみる。
 大統領はREIとの会談で、外国人への規制緩和に賛成したが、国民による不動産取得を優先し、価格高騰により自国民への供給に支障を来すことがないよう念を押した。
 会談翌日の24日、ソフヤン・ジャリル経済調整相は大統領の意向に沿い、外国人が所有できる物件に価格制限枠を設けると言明。50億ルピア以上とし、対象は高級マンションだと説明した。同日、バスキ公共事業・国民住宅相も初めて「50億ルピア」と制限枠を示した。
 エディREI会長は閣僚らの発言に追随する考え。「外国人への規制緩和には理想的な価格帯だ」と歓迎する。先行して外国人の不動産所有を認めているシンガポールやマレーシアと比べて対象物件は安く、インドネシアへの住宅投資流入を期待する。
 ただし「大統領発言を尊重し、国民への供給にも配慮する」と慎重姿勢も示した。
 不動産開発大手インティランド・デベロップメントは、規制緩和は外国人の違法居住を縮小させる効果もあるとみる。
 不動産市場に詳しいルスタンディ氏は、インドネシアへの移住を望む外国人が増える一方、事実上使用権しか認めない「在留外国人による住宅所有に関する政令」は現実に即していないと指摘。この結果、バリやバタムの島では非合法に居住する外国人が増加しているという。規制緩和されれば、外国人の住宅投資は高層マンションがあるジャカルタなど都市部へ流れると予測する。
 エディREI会長も、インドネシア人名義を借りた外国人の不動産所有が横行しているのが現状で、現行規定は効果を上げていないと指摘する。
 バリ州で10年以上、邦人などに不動産サービスを提供している「バリ不動産」の谷慎太郎代表は、「外国人への規制緩和自体はありがたい」と歓迎。ただ、実際の許認可は地方政府で大きく異なるため、動向を見守りたいとしている。
 同州では高層建築物が少ないことから、マンションの区分所有を基本とした現行案では効果はあまり大きくないとみる。ジョコウィ政権は現状で外国人への規制を強化した側面もあるとし、政策には半信半疑にならざるを得ず、規制緩和の影響も慎重に見極めたいとの考えだ。
 民間調査機関のインドネシア不動産ウォッチ(IPW)は、外国人所有の不動産を高級物件に限定しても、一般国民が取得する中級物件にも影響し高騰すると分析する。アリ上級理事は、価格制限枠が100億ルピアを下回った場合、国内不動産全体の値上がりは必至で、50億ルピアまで緩和すればマイナス面が大きくなると警戒心を強めている。(前山つよし)

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