派遣先選定に課題も 1、2期終了、次は地方へ 日本語パートナーズ

 国際交流基金が昨年9月、ネイティブの日本語話者と高校との交流を促進させようと、首都圏の高校へ派遣していた日本語パートナーズの第1期25人が任期を終えた。第2期の23人も15日に任期を終え帰国しており、初の試みとなった初年度事業が終了した。来月開始される第3期以降は人数を増やし、首都圏外にも派遣地域を広げる。2020年までに2千人に上る人材派遣事業をめぐり、パートナーズや地元教師からは「継続的に派遣されなければ効果は限定的」「日本語教師対象の研修を増やしてほしい」などの声も上がっている。
■学習意欲が向上
 26日に開催された第1期の帰任式では、25人のパートナーズが派遣先の現地日本語教師、校長らとともに出席。約9カ月にわたる活動をビデオなどで振り返り、出席者が涙ぐむ場面もあった。
 南ジャカルタのバクティ・イダタ私立高校に赴任していた佐藤里奈さん(22)は「日本語教師になるという夢につながる経験で、非常に充実していた」と振り返る。現地日本語教師からは「ネイティブの日本人と触れ合って、生徒の日本語を勉強しようという意欲が格段に増した」という声が目立った。
 国際交流基金の小川忠東南アジア総局長は「パートナーズ事業は日本語教育関連で、高校へ大人数を派遣する初の事業。日本語教育に役立つ現場の情報が皆さんから多く入ってきたので、今後に生かしていきます。お疲れ様でした」とねぎらった。
■後任不在に不安も
  初の試みでもあり、期待が高い半面、改善を求める声も相次いだ。パートナーズからは主に▽外国人を受け入れる体制が整っていない高校も多く、派遣先の選定方法に疑問がある▽3期以降のパートナーズを継続的に受け入れられるのかが不透明。後任が来なければ日本語教師、生徒らの経験も一時的なもので終ってしまう――などの指摘だ。
 地元高校の日本語教師からは、2千人という大人数のパートナーズを短期間派遣するより、日本語教師が日本に研修に行く機会を増やしたり、日本語教育を拡充したりしてほしいとの声も上がった。
 派遣高校は、教育文科省とインドネシアの高校日本語教師会の推薦を受けた高校を国際交流基金が調査して選定している。しかしパートナーズからは「赴任後に日本語の授業回数が説明よりも少なかった」「現地の日本語教師の日本語レベルが低く、意思疎通が難しかった」「そもそも日本語の授業がなかった」といった指摘も出た。
■教師会と連携強化
 国際交流基金ジャカルタ日本文化センターの榛澤周一副所長は、日本語教師の日本研修について「15年度から、パートナーズを受け入れている高校の日本語教師50人を2週間、日本に派遣する予定」と説明する。
 パートナーズ事業は文化交流も役割に含まれているので、日本語教師の派遣とは性格が異なる点がある。第3、4期で後任を派遣できない高校にも、第5期以降の再派遣を視野に入れているという。また派遣先選定は、日本語教師会などとの連携を強化して適切な高校を選んでいく方針だ。
 7月中に着任予定の第3期以降は、派遣地域がジャボデタベック(首都圏)外にも拡大する。そのため派遣先高校の調査はより難しくなることが予想され、現場との協働作業もさらに困難になることも考えられる。
 国内の大学で長年日本語教師をしている日本人男性は「日本語事業で過去に類を見ない初めての大きな事業。インドネシアの日本語教育事情を根本から変える可能性がある。パートナーズと大学間の関係を作るなど、日本語教育の現場により有益なプログラムにしていってほしい」と話した。(藤本迅、写真も)

日本語パートナーズ派遣事業 
 安倍首相が2013年12月、日・ASEAN特別首脳会談で発表した文化交流拡大政策「文化のWA(和・環・輪)プロジェクト〜知り合うアジア〜」に基づいた事業。日本政府は国際交流基金を通じて、20年の東京オリンピック開催まで、現地日本語教師の補助役と日本文化紹介の役割がある日本語パートナーズ3千人超を東南アジア諸国連合(ASEAN)に派遣する。インドネシアには約2千人で、15年度の第3、4期は合計で74人を派遣する。第3期以降は、派遣地域も従来のジャボデタベック(首都圏)以外に、西ジャワ州、東ジャワ州、中部ジャワ州、ジョクジャカルタ特別州、北スマトラ州、南スマトラ州、バリ州、南スラウェシ州へ拡大させる。

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