泥炭火災に効果 石けん水で実証実験 JICA草の根事業 シャボン玉石けん

 無添加石けんを製造するシャボン玉石けん(本社・北九州市)が、インドネシア・カリマンタン島などで問題となっている泥炭火災の消火に向け、研究開発を続けている。6月中旬に中部カリマンタン州パランカラヤ市で行った実証実験では石けん系消火剤の有効性が確認され、9月の再実験を経て、実用化のめどがついたという。泥炭火災は水だけでの消火が難しく、同社の無添加石けんなら環境負担も小さいため、実用化されれば、泥炭火災対策にはずみがつきそうだ。

 実験は、国際協力機構(JICA)草の根事業の一環で、6月6〜13日、パランカラヤ市内のパランカラヤ大学構内で行われた。シャボン玉石けんのほか、北九州市消防局などが参加した。3メートル四方の木枠(深さ30センチ)に乾燥させた泥炭土壌を詰め、4区画に分けて着火した。4時間燃焼させたあと、区画ごとに水、石けん系消火液、石けん系泡消火剤で消火を開始。水と比べると消火液は約半分の量で、泡消火は4分の3の量で、それぞれ消火できたという。
 泥炭火災は腐敗した草木が堆積した表層そのものが可燃性のため、出火するとくすぶり、放水しても水が蒸発して地中に入らず、鎮火が難しい。シャボン玉石けんでは、既に林野火災消火で実績のあるクリーム状の泡で表面を覆って空気を遮断する方式と、石けん洗剤を薄めた水溶液で地中まで水分を行き届かせる方式の両面で実験を進めている。同社研究開発部の川原貴佳さんは「消火液方式の効果が特に確認できた。1年で最も乾燥する9月に再び現地で実験し、実用化を急ぐ」と話している。
 インドネシアの森林・林野火災は、1997年以降のデータがある衛星情報によると、年間1〜15万件発生し、その大半をスマトラ島とカリマンタン島が占める。両地域は泥炭層が多く、火災による煙害があとを絶たない。泥炭地ではパーム油の原料となるアブラヤシが育つため、大規模農園が多く、その開墾などで行われる野焼きが火災の原因とされている。環境・林業省でアドバイザーを務めるJICA専門家の平山修一さんは消火液での実験について「すばらしい成果で、特に市街地に近いところでは効果が大きいだろう。ただ、火災は予防が第一。煙害の拡大には農業の大規模化が背景にある。人の意識を変えることから始めないと根本的な解決にはならない」と話している。
 シャボン玉石けんは創業1910年という老舗で、1970年代に合成洗剤から無添加石けんの製造を開始。合成界面活性剤などを使わない無添加石けんは価格は高いが環境への影響が小さく、消火後の土地利用も短期間で可能になる。
 石けん消火剤は1995年の阪神・淡路大震災がきっかけだった。水が確保できず、火災で多数の犠牲が出たため水量を減らす泡方式の消火剤を開発した。(田嶌徳弘)

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