予審判断で法曹界混乱 有効性疑問視する声も KPK・警察の対立

 次期国家警察長官候補だったブディ・グナワン容疑者に対する汚職撲滅委員会(KPK)の捜査を無効とした南ジャカルタ地裁の予審をめぐり、判断の有効性を疑問視する声が上がっている。不服申し立ての可否についても法曹界の意見は分裂。容疑者認定を取り消す予審判断は極めて異例で、法解釈が定まっていないためだ。混乱が続く間、同様の予審を起こす汚職容疑者も相次いでいる。

 南ジャカルタ地裁で予審を担当したサルフィン・リザルディ判事は、収賄があったとされる2004〜06年に、ブディ容疑者が務めていた国家警察教育実習所所長という役職に注目。警察の管理部門にあたり、KPKが捜査対象とする司法警察権を行使する立場になかったことや、公務員としての階層が比較的低かったことなどから、容疑者認定は無効と判断した。
 これに異議を唱えたのは、汚職に対して厳しい目を向ける法律家や市民団体。刑事訴訟法には、誤認逮捕があった場合の救済措置に関する規定はあるが、容疑者認定を取り消す条項はなく、予審に捜査の有効性を判断する権限はないとの見方だ。ハリフィン・トゥンパ元最高裁長官は地元紙に「サルフィン氏は権限を過大に行使した」と解説。ジョコ・サルウォノ元最高裁判事も「誤解に基づく判断に効力はない」と指摘した。
 インドネシア法律政治研究センター(PSHKI)など複数の市民団体は、サルフィン判事が権限を逸脱したとして、同判事を処分するよう最高裁に求めている。判事を監視する公的機関である司法委員会も同様の指摘をしており、対応を検討している。
 当事者のKPKも、南ジャカルタ地裁を通じて最高裁への抗告を請求したが、同地裁は「予審結果は抗告できない」として訴えを退けた。ジョハン・ブディ副委員長は26日、「容疑者認定の是非を問う司法判断は前例がない」と、戸惑いを吐露。それでも「予審は汚職捜査を中止させるものではない」と強調し、別の不服申し立ての手段を検討する姿勢を示した。一方、警察による捜査を受けて停職中のアブラハム・サマッド委員長に代わり、KPKを率いるタウフィックラフマン・ルキ委員長代行からは25日、「裁判所の判断の尊重」を理由に、捜査の中止を示唆する発言も出ており、KPKの足並みもそろっていない。
 予審制度をめぐる論争が続く中、動き出したのはKPKの捜査を受けている汚職容疑者だ。宗教相時代に政府主催の聖地巡礼ツアー向け預金を私的流用したとされるスルヤダルマ・アリ容疑者(開発統一党=PPP=党首)が23日、同地裁に予審を請求。26日には、エネルギー鉱物資源関係の予算承認の見返りに関係者から賄賂を受けとっていたとされる元国会第7委員会委員長のスタン・バトゥガナ容疑者(民主党)が同様に予審を申し立てた。(道下健弘)

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