「高速鉄道事業を中断」 中期開発計画から除外 他の2事業も盛り込まず 国家開発計画相 日本政府 対応苦慮

 日本官民が経済協力の目玉として取り組んできた首都圏投資促進特別地域(MPA)プロジェクトの推進をめぐり、日本側とジョコ・ウィドド(ジョコウィ)新政権の思惑の違いが表面化してきた。インドネシア側が首都ジャカルタとスラバヤ間のジャワ高速鉄道(新幹線)建設計画をはじめ、数件の案件の中断や見直す意見が出ている。日本側は局面打開の道を探っている。

 アンドリノフ・チャニアゴ国家開発計画相は15日、じゃかるた新聞の取材に対し「ジャワ高速鉄道建設計画は中期開発計画(2015〜19年)に盛り込まない」と事実上計画を中断することを明らかにした。高速鉄道事業は両国間で開発準備を進めることで合意、日本側は事前調査に着手していた。
 また同開発計画相は「日本政府と計画を予定していた約20の事業のうち、二つも盛り込まない」とも述べた。MPAで進める20優先事業の一部を指しているとみられる。
 複数のインドネシアメディアも14日から相次ぎ「運輸省はジョコウィ大統領とユスフ・カラ副大統領がジャカルタ〜スラバヤ間の超高速鉄道プロジェクトを実施しないことを確認」(アンタラ通信)などと報じた。
 アンドリノフ開発計画相が「駐インドネシア大使から(プロジェクトの推進をめぐり)圧力を受けた」と自身のフェイスブックに投稿したことに関連して明らかにした新幹線計画の中止を所管官庁も確認したことになる。
 国際協力機構(JICA)担当者は「高速鉄道事業中止という話は聞いていない。調査は予定通り続ける」と話した。
 中断する他の2事業についてインドネシア側は明らかにしていない。しかし、日本政府筋によると優先事業の中でも日本側が最重要視しているチラマヤ新港建設計画についても推進は流動的だ。
 新政権はジャワ島外でのインフラ整備を重視しており、日本の円借款についてもジャワ島以外のプロジェクトで使用したいと日本側に伝えてきた。また、チラマヤ新港建設の受益者は日本企業として、インドネシア政府は関与に否定的だ。
 ジョコウィ新政権はMPAを含むインフラ整備事業を見直している。日本のMPA関係者は「ユドヨノ政権下では、着工する前提で調査していたが、新政権になって風向きは変わった」と話す。MPAをユドヨノ政権との合意に基づき進めるつもりでいた日本側とは思惑の違いが広がっている。
 一方でインドネシア側も国家警察長官をめぐる政治的混乱が起きるなど、政権の安定度に疑問符も付き始めた。新政権とどう協力関係を構築するか、日本側も態勢の立て直しが迫られそうな情勢だ。(堀之内健史、アリョ・テジョ)

■国営企業相も訪日へ 国営企業幹部ら同行 今月下旬
 リニ・スマルノ国営企業相は15日、谷崎泰明駐インドネシア大使と会談し、今月下旬にも日本を訪問する予定を伝えた。国営企業幹部が同行する。
 大使館によると、リニ氏は「新政権は経済開発において、国営企業がより大きな役割を果たすと考えており、日本の協力を期待したい」と述べたという。谷崎氏は、日程調整で協力すると応じた。これとは別に、ゴーベル商業相も19日から22日までの日程で訪日を予定している。

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