「中立」民主党、政権入りも プラボウォ氏に攻勢 間接選挙で与野党攻防

 「中立」をうたってきた民主党のユドヨノ党首(前大統領)が政権入りのシグナルを発している。地方首長選の間接選挙導入をめぐり野党連合との対立が深刻化。さらに国家人権委員会がジョコウィ大統領に対し、野党を率いるプラボウォ氏の人権侵害疑惑を裁く人権特別裁判所の設置を要求。与野党攻防のキャスティングボードが曖昧な態度を貫いてきたユドヨノ氏の手に渡っている。

 ユドヨノ氏は8日、ジョコウィ大統領と会談。一時は野党合流も取り沙汰されたユドヨノ氏だったが、地方首長選の直接選挙をめぐってバクリー・ゴルカル党党首らと対立。会談では「民主党は最初から与党でも野党でもなかった」と語り「直接選挙では(ジョコウィ氏と)同じ考え方をしている」と蜜月をほのめかした。ただ与党入りを明確にはしていない。
 これまで攻防の鍵は、闘争民主党に次ぐ議席を持つゴルカル党が握った。ゴルカル党が親ジョコウィの党首を選出した場合、6割超の安定連立が誕生する可能性があった。だが、同党は先週までに2派に分裂し、機能停止状態に陥った。
 このため民主党は「中立」の立場から、議会のキャスティングボードを握れる位置についた=表。10月からの新国会は、与野党攻防でおおむね機能停止を続けており、審議を待つ法案が列をなしている。
 「ユドヨノショック」は大きく、プラボウォ・グリンドラ党党首、バクリー党首らは11日、ユドヨノ氏の私邸を訪れ、直接選挙の復活に賛成すると翻意。親戚関係のハッタ国民信託党(PAN)党首は12日「ユドヨノ氏は約束を守ってくれる」と話した。
 ただ、足下では悲観論も出ている。グリンドラ党のデスモンド・マヘザ氏は地元メディアに対し「最高でも野党連合は3年間が限度かと思われる。4年目以降は(連合する)利益がなくなっている」と話した。
 ユドヨノ会談から2日たった10日、国家人権委は最高検察庁とともにスハルト政権末期の人権侵害疑惑についての調査チームを立ち上げると発表。検事総長には与党ナスデム党国会議員からプラセトヨ氏が就任している。
 ユドヨノ氏はプラボウォ氏の活動家拉致(13人行方不明、1人死亡)への関与を認めた1998年8月の軍法会議の委員だった。5月暴動時には軍内でプラボウォ氏と激しく対立したウィラント・ハヌラ党党首(元国軍司令官)も政権内にいる。
 今年の大統領選でもウィラント氏は、個人的な判断でプラボウォ氏が拉致を行ったと改めて発言。ユドヨノ氏らもサインしたプラボウォ氏の軍籍はく奪決定書が漏えいした。ユドヨノ氏はプラボウォ氏が台頭し始めたユドヨノ政権後期にも、人権裁判所設置による「プラボウォたたき」を検討していた。(吉田拓史)

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