【BJS】バンドン日本人学校 30 周年 学年越え触れ合う 佐藤校長インタビュー

 4月に開校30周年を迎えたバンドン日本人学校(BJS、西ジャワ州)。「太陽の子・バンドンの子(明るい心、がんばる力)」を教育目標に、子どもたちの自立心と感性の豊かさを育んできた。同校のこれまでの歩みから将来について上下2回で報告する。上では佐藤邦壽(くにひさ)校長に同校の現状について聞いた。

■学校全体が一つの家族
 バンドン日本人学校では現在、幼稚園5人、小学部10人、中学部5人の全校生徒20人が学ぶ。この数は東アジアと大洋州にある38の日本人学校の中で最も少ない。入学の条件は日本国籍を有する子どもで、日本から仕事でバンドンへ来た日本人夫婦の子どもと、インドネシア人女性と日本人男性夫婦の子どもが約半分ずつ通っている。
 「こんな学校は珍しく、他にはないと思う。幼稚園児から中学部3年まで学年の垣根を越えた触れ合いはもちろん、教員も毎日一緒に遊ぶ。親もさまざまな学校行事に参加し、力を合わせて活動するため、壁がなく仲が良い。子どもたちは毎日この学校で過ごすうちに、相手を思いやり、人とのつながりを大切にするようになる」という。  
 先生と生徒は親子、生徒同士は兄弟のように親密で、学校全体が大家族のようだという。

■生徒の自主性重んじる
 同校の教育目標は自立心のある感性豊かな子どもを育てること。算数や国語といった受験に必要な科目だけでなく、音楽や美術などの技能教科にも力を入れている。授業では教員は手を貸しすぎないよう気を配り、子どもの自主性を大切にしている。
 「日本の教科書を手に入れるのが難しいため、教師らは手作りの教材を使用し生徒の学生意欲・やる気を引き出そうと常に試行錯誤している。指導力の高い教員がそろっている」
 昔は生徒数が多かったため学年別で授業をしていたが、現在は少人数のため技能教科では2学年を同時に教える複式授業を導入。「複式授業の良いところは、例えば教員が1年生を教えている間、2年生は一人で自学自習をしなければならず、自立心が育つ。その一方で、教員は時間をかけて一人一人が分かるまで教えています」

■日本文化を確実に学ぶ
 日本の伝統文化をきちんと伝え、日本の精神や文化を教えるという思いは30年前の開校時から変わらない。学習発表会や運動会などの学校行事に加え、インドネシアでは経験できない「七夕」や「子どもの日」など日本の祭事に基づく行事を必ず実施している。
 「国際人という言葉があるが、世界で活躍できる国際人になるには自国のことを知った上で、海外のことを学ばなければならない。自国を知らない人は、根無し草のような人だ」という。同校では、日本人の核となる日本の歴史や伝統文化を正しく理解、認識したうえで、インドネシアについて学ぶことを基本としている。

戦前から続く歴史

 バンドンには1933年から日本人が通う学校があった。太平洋戦争中に一度閉校するが、その後、77年に補習授業校が設立され、その7年後の84年、日本人学校に格上げされた「バンドン日本人学校」が開校した。バンドンでは明治の終わりから日本人の商業活動が行われ、戦前には日本人が経営するバンドン初のデパート「千代田百貨店」などがあったという。
 仕事をするために家族を連れてバンドンへ来る日本人にとって一番の不安は、「我が子の教育をどうするのか」ということだった。「きちんと日本の教育を受けられる場所が必要で、その要望に応え戦前から脈々と続いてきた。今は生徒数も減少し財政状況も厳しいが、何としてでも存続できるよう道を探っていきたい」
■生徒の増が課題に
 現在の同校の課題は生徒数の減少だ。現生徒数では財務状況が厳しいため生徒を増やす必要がある。適正な生徒数は、小中学部は1学年10人の9学年で合わせて90人、幼稚園は最大10人だという。「生徒を増やすために、教育の質を高めた魅力ある学校を目指す」
 一つは日本国内の子どもたちに引けを取らない学力をつけることだ。親の一番の願いは子どもの学力を高める事であり、学力が低いままでは本来の教育の目的も達成できていないことになる。もう一つは昔から脈々と続く、バンドン日本人学校の良さをそのまま残すこと。同校には30年間で計1009人が在籍した。卒業生の中にはインドネシアで日本語教師になりたいという夢を10年越しでかなえた生徒もいる。
 日本とインドネシアの懸け橋になれるような、自立心のある感性豊かな子どもたちがのびのびと育つ環境がここにはある。「一番の願いは、いつまでもこの学校が続いてほしいということ」。(毛利春香)

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