「アホック知事」議会通過 華人首長、来週にも就任

 ジャカルタ特別州議会は14日、特別本会議を開き、アホック知事代行を知事昇格とするチャフヨ内相の決定をプラストヨ議長が読み上げた。法律上、知事代行の知事への昇格には州議会承認が必要ないが、出席した会派による満場の拍手で、事実上議会を通過した。州議会は同内相を通じてジョコウィ大統領に「通過」の旨の書簡を送り、大統領決定の発布を経てアホック知事誕生の運びとなる。早ければ18日にも就任する。華人初のつわもの州知事が、プリブミ(原住インドネシア人)と華人の溝が残る社会で新しい地平を切り開けるか、市民らが注目する。

■壁を崩す開拓者
 州議会多数派のプラボウォ派がアホック氏の昇格を遅らせてきた。14日の特別本会議も欠席し、「手続きと内相決定に問題がある」(トリウィサクサナ副議長=福祉正義党会派)としている。
 ジョコウィ前知事が大統領に「繰り上った」ことで、中央と首都ジャカルタ特別州は今後、連動して政策を打てる見通しとなる。ユドヨノ政権時は不協和音が流れていた。ただ、州議会運営は難しく、既定路線を実現することで、世論の支持を得ることが重要になる。
 日刊紙コンパスが8月に実施した調査では、州民の71.4%が2年間のジョコウィ・アホック州政に「満足している」と回答している。低所得者向け医療制度、奨学金が支持の原動力になった。
 アホック氏にとっては知事就任後、副知事選びが最初の関門になる。自身は補佐官の登用を望んでいるが、闘争民主党(PDIP)ジャカルタ特別州支部長のボイ・サディキン氏か東ジャワ州ブリタル市長のジャロット・サエフル・ヒダヤット氏が現実的だ。

■華人を組み込め
 アホック氏の活躍は華人の政界進出の大きな契機になった。政界に道が開ければ、経済界で大きな実力を持つ華人をインドネシアに深く関与させることができる。華人に壁をつくることは、資産が海外に逃げたり、人的資源が海外に逃げたりと経済に副作用を及ぼしている。
 アホック氏を非難する軸は二つある。(1)ジャカルタ土着の民族ブタウィ(2)「ムスリムはムスリムが率いなければならない」とする論理。ジャカルタは住民の約4割が流入者であり、ブタウィは支配的ではなく、多様な民族が混ざり合うコスモポリタンだ。州の人口の85%がイスラム、プロテスタント7.5%、仏教3.3%、カトリック3.16%だが、インドネシアはナショナリズムを国家統合の根拠にしている。アホック氏が、この2点からのプラボウォ派の圧力をかわせるかが課題となる。

■率直、頑固、相手選ばず 時に過激発言のアホック氏

 アホック氏は相手を選ばず歯に衣(きぬ)着せぬ物言いをしてきた。
 大統領選中には、グリンドラ党、福祉正義党(PKS)などの支部長に出向き「プラボウォ氏の家族にもキリスト教徒がいる」として、宗教差別キャンペーンを止めるよう求めた。
 大型街区(スーパーブロック)の法規をめぐっては、クニンガンで施設エピセントルムを運営するバクリー・ゴルカル党党首の財閥を「義務を果たそうとしない」と名指しで批判した。
 プルイット調整池の違法住宅移転では、州有地を占拠する住民に対し、所有権を認めない「共産主義者だ」と非難。共産主義が違法なインドネシアでは、激しい罵倒にあたり波紋を呼んだ。
 タナアバン露店商移転では、露店商の大立者である州議会のルルン・ルンガナ副議長と対立。ルルン氏の放った自警団構成員が副知事庁舎内に侵入すると、会議室で議論し、その様子を動画共有サイトに投稿して対抗した。
 東ブリトゥン県知事は、弟のバスリ・チャハヤ・プルナマ氏が務める。(吉田拓史)

◇【プロフィル】 1966年6月29日、東ブリトゥン県生まれ。プロテスタント。トリサクティ大学鉱物工学部卒。94年プラスティヤ大学院経営学修士号取得。92〜2005年、研磨加工会社取締役。04年東ブリトゥン県議、05〜06年同県知事。09〜12年国会議員(ゴルカル党会派)、12年ジャカルタ特別州副知事。14年知事代行。06年には週刊誌テンポで「インドネシアを変える10人」に選ばれる。

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