政・経の質向上が課題 本名教授が新政権を展望 三菱東京UFJ銀講演会

 本名純・立命館大学教授は7日、三菱東京UFJ銀行ジャカルタ支店が中央ジャカルタのホテルで開いた経済講演会で、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権の今後を展望した。同支店の林哲久副支店長も登壇し、2015年の経済見通しについて分析した。約500人が聴講した。

 本名教授は、前政権は安定と成長を達成したが、新政権の課題は政治と経済の「質の向上」とし、具体的には▽「中進国の罠」の回避▽所得の再分配▽汚職撲滅▽テロ対策―を挙げた。
 中国などへの資源輸出を主力に経済を伸ばしてきたが、今後は高付加価値の製品を輸出する経済への転換が必要とした。このため、インフラ整備や人材育成が急務となるが、燃料補助金の削減では予算が足りない。外資導入と、これに反対する保護主義勢力の主張をどう調整するかが問われるという。
 また、経済成長に主眼を置いた前政権に対し、新政権では社会保障の拡充など再分配メカニズム構築に向けた取り組みを重視している。予算確保に向け、徴税の厳格化が求められており、税務マフィアの撲滅が課題になるとした。
 09年以降、大規模テロは影を潜めているが、警察官を狙った報復テロが頻発していることも指摘した。また、テロ容疑で逮捕された受刑者数百人が刑期を終えて出所し始め、当局も動向を把握できていない。過激派組織「イスラム国」に国内から参加した人物の帰国も確認されており、新たなテロの危険が潜在しているという。
 こうした課題に取り組む上で懸念となるのが、国会や与党連合内での力関係と分析。国会では野党に多数派を握られている上、メガワティ闘争民主党党首やユスフ・カラ副大統領との間でも緊張がある。プアン・マハラニ人間・文化開発調整相らの登用にメガワティ党首の影響力がみられ、大統領周辺からは「大統領に意見したければ、メガワティ党首にロビーすればよい」という風潮が頭痛の種だとの声も漏れる。
 大統領選では東部地域の集票でカラ副大統領が大きく貢献した。加えて、ゴルカル党が来年1月の党大会で同党出身の副大統領と親しい党首を選出すれば、同党の与党転向も視野に入る。そうなれば、国会運営の安定化に寄与するものの、副大統領の発言力増大につながる。
 大統領が自身の高い支持率や汚職撲滅委員会(KPK)との良好な関係を材料に駆け引きを有利に進められるかが鍵になるという。
 長期的な動向を占う上で重要なのが「海洋国家」構想だ。軍事や外交から地方経済の分野を貫く「総合的な国家ドクトリン」で、海軍の近代化や、違法漁業の取り締まりなど海洋ガバナンスの強化、海洋資源の活用が構想されている。
 特に、海洋資源の共同調査・開発や、地方経済活性化に必要な港湾整備の面では日本も貢献できる。「経済ナショナリズムの台頭もある程度予想しておく必要があるが、大統領や周辺は合理的に考えている」として日本の貢献に期待した。(田村隼哉)

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