スマトラゾウ密猟後絶たず 象牙狙い  アチェ州 絶滅の恐れ、WWF対策急ぐ

 絶滅の危機にさらされるスマトラゾウの密猟が後を絶たない。アチェ州警は今月に入って牙を取られたスマトラゾウ3頭の死骸を発見した。2年間で見つかった死骸は31頭にのぼる。個体数が減少するスマトラゾウの保護に世界自然保護基金(WWF)や林業省が対策を急いでいる。(西村百合恵)

 アチェ州アチェジャヤ県パンゴン村で5日、牙を取られたオスのスマトラゾウの死骸が見つかった。同州警によるとゾウは20歳前後で、死後1週間が経過しているという。死因は不明だが、目立った外傷がないことから毒殺の可能性があるとして北スマトラ州メダンの科学捜査班に調査を依頼し、死因の特定を進めている。
 7日には同州東アチェでオスのスマトラゾウの死骸が2頭見つかった。同州警は、1頭はアブラヤシ農園から200メートルの距離で発見され、顔面が牙ごと刃物で切断されていたと明らかにした。象牙を狙った密猟者による銃殺だとして、近隣住民から情報を集めている。別の1頭は、近くの川岸を通りかかった住民が発見。これも牙を取られていた。当局はゾウの死因は毒殺だと明らかにし、毒物の特定を急いでいるという。
 WWFインドネシア事務所のデデ・スヘンドラ氏は2012年からの2年間でアチェ州だけで31頭、リアウ諸島州やランプン州を合わせると約100頭のスマトラゾウが犠牲になっていると話している。
 WWFはスマトラゾウを絶滅の恐れのある野生生物のリスト「レッドリスト」で絶滅の恐れが最も高い「近絶滅亜種」に指定している。今年8月末にバンダアチェ市で開かれた「持続可能な森林管理プログラムのための活動会議」の報告では、スマトラゾウの個体数は1724頭で、07年に確認された2400頭から大きく減少している。
 WWFはスマトラゾウの減少について、密猟のほかに森林伐採によって生息地を奪われていると指摘している。特にアチェ州では森林伐採や、アブラヤシ農園の開発が進んでいる。WWFは同州330万ヘクタールの森林の保護を、林業省や同省天然資源保護局(BKSDA)に訴えている。 象牙は中国などに輸出され、高値で取引されている。スマトラ島は世界屈指の生物多様性を誇るとともに、世界で最も森林破壊が進んでいるといわれている。スマトラゾウのほかに、レッドリストに登録されているスマトラトラやスマトラサイ、マレーバク、マレーグマ、オランウータンなども生息している。

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