【石油マフィア】(中) 石油精製阻む高い壁 カレン社長辞職の背景 (2014年09月09日)

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 国営石油ガス・プルタミナの石油精製能力は、日に150万〜160万バレルに達する消費に追いつかないため、海外の精製設備に依存する以外ない。国会で闘争民主党(PDIP)などは、プルタミナの子会社ペトラル(本社香港)を通じて、シンガポールやマレーシアで精製した石油を買うことを非難してきた。輸入石油の通用口ペトラルを「解体するべき」との議論もある。

■石油のゴッドファーザー
 ムハンマド・リザ・ハリッド氏はシンガポール登記の石油会社を持つ。ジョコウィ陣営の日刊紙メディアインドネシア6月30日付は大統領選のさなか「リザ氏はシンガポールで石油のゴッドファーザーと呼ばれている」と書いた。
 補助金燃料のコストは巨大だ。海外で精製された石油の価格を補助金で押し下げ、リッター6500ルピアの安価な小売価格を実現する。この費用が今年の中央政府予算の22%を占めるが、財務省などは補助金燃料の過半を、私有車を持つ中間層以上が享受していると批判してきた。
 しかも、中銀のミルザ上級副総裁は先月27日「毎月37億〜40億ドルの石油を輸入している。これは外国為替を使う」と話した。インドネシアは97〜98年のアジア通貨危機でルピアの暴落を経験。昨年も1ドル1万2千ルピア台のルピア安危機を迎えた。外貨準備を脅かしかねない政策は余りにも危険だ。

■精製施設建設に熱意
 もし国内に十分な精製能力があれば「輸入」を減らすことができる。精製施設の建設に熱意を示したのが、プルタミナのカレン社長だ。
 プルタミナは自己資金で投資額を確保できなかったが、日本、イラン、クウェート、サウジアラビアが興味を示した。国営石油サウジアラムコ、クウェート石油公社との協力も浮上した。だが、サウジアラムコなどは30年のタックスホリデー(免税期間)、土地の供与などを求めたため、財務省が難色を示した。
 8月中旬、カレン氏は10月に退任し、ハーバード大学に移ると明らかにした。9月初旬、ジェロエネルギー鉱物資源相が職権を不正に利用したとして汚職事件の容疑者に認定された後、カレン氏だけが残された。
 カレン氏はルディSKKミガス前長官から国会に金を配るよう要請されたと一度供述して撤回。数度にわたりKPKの長時間の聴取を受けた。プルタミナを管轄するダフラン国営企業相は8日、「誰が最もジェロ容疑者から圧力を受けたか」と記者団から問われ「カレンだ」と言った。

■スリ氏辞職と類似
 週刊誌ガトラによると、プルタミナの労働組合幹部は「ある大統領候補がカレンに圧力をかけた。候補はプルタミナのビジネスに利権を持っていた」と話した。圧力をかわすためにも、KPKの捜査が進むなかでも、退任し、海外にいるのは正解だと話した。
 業界では、カレン社長が辞任表明したのは、石油精製施設を整備しようとしたため圧力をかけられたと言われる。「プルタミナのトップになってからカレンはずっと新しい精製施設を作りたがった」との証言が報じられている。
 石油ガス業界に人材を多く輩出したバンドン工科大卒の女性経営者の「退場」は、スリ・ムルヤニ氏の「先例」を想起させる。不透明な公的資金注入が繰り返されたセンチュリー銀事件をめぐる政局の結果、2010年、財務相を辞して世銀専務理事に移った。財務省改革を進め、財政の闇に一石を投じたことは確かだ。(吉田拓史、つづく)

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