インフラ早急に着手を 経団連の大八木委員長に聞く 新大統領の手腕に期待

 人口2億4千万、日本企業が海外投資先として最も注目する新興大国インドネシア。ジョコ・ウィドド氏が10月20日、次期大統領に就任する。経団連は初の庶民派大統領が率いるインドネシアにどう向かい合っていくのか。経団連の日本・インドネシア経済委員会の大八木成男委員長(帝人会長)は強い期待を表明した。 
                  
 大八木委員長はジョコ・ウィドド氏、ユスフ・カラ氏の正副大統領の選出について「プロセスが民主主義の原則に基づき実施されるか注目していた。選挙も憲法裁の審理も極めて円滑に実施された。心からお祝いを申し上げたい」と述べた。

■民主化進展が成長生む
 その上で新興国発展の一番のネック(障害)は民主的な政治体制が定着していないことにあるとし、「ユドヨノ大統領に続き、ジョコ氏の選出で政治体制の民主化が確立されたと理解すると、開発は今後いろいろな形で進むと期待できる」と述べ、ジョコ氏の選出に見られる民主化の進展がインドネシアの安定的発展に寄与するとの認識を示した。
 その上で同委員長は「ジョコ氏はジャカルタ特別州知事として相当の功績を挙げられた。貧困層を助け国民の強い支持を得た。国全体の問題でもあるインフラ(社会的基盤)整備についてもその行政手腕に強く期待している」と述べた。

■中間層の急拡大に注目 
 インドネシア経済については「人口は世界で4番目、経済規模も購買力平価でみると10位、実質でも16位」の大国と位置づけ、「上手に人口ボーナスをとらえて成長してきた」と分析した。「繊維産業をはじめとする軽工業から自動車、機械工業もある。原油精製も農業も、という意味でいろいろな産業が並行して成長を遂げてきた」とこれまでの経済運営を評価した。
 その上で「所得階層は2層ではなく3、4層に拡大、上昇している。一人当たりGDP(国内総生産)は下層階級で3千ドル台後半になってきており、人口ボーナスを確実に生かしながら成長できる国」との評価を示し、「一般消費財は12.3%伸びていることは中間層がものすごい勢いで伸びている証し」として、消費財を中心に日本企業に大きなチャンスが広がっているとの認識を示した。

■閣僚と経済人の会議を
 今後のインドネシアに対する経団連の取り組みについて、成長のネックがインフラの遅れであることを指摘した上で、「通勤電車や高速道路の整備は資金がかかっても早急に着手しなければならない」と強調。日本からは資金と技術両面の支援が必要として、ODA(政治開発援助)活用も提言した。
 経団連はインフラプロジェクト推進に積極的に関与する姿勢を改めて示した。
 また、インドネシアで自国の産業を保護する動きが強まっていることに言及、「産業にアンバランスが生じる懸念があるが、その対策はインドネシア側の仕事」と述べた。さらに「日本側ができるのはアドバイス」として「両国の経済閣僚と経済団体同士が集まる会合を早急に設置すべきだ。新大統領の下でそうした機会が実現すると本当の意味で両国関係は動き始める」とし、新政権に強い期待を表明した。(聞き手、編集委員、小牧利寿)

◇プロフィル 大八木成男(おおやぎ・しげお)
 1971年、慶大経済学部卒、帝人入社。ほぼ一貫して医薬品部門を歩む。98年6月東京支店長。帝人グループ専務執行役員医薬医療事業グループ長兼医療事業本部長などを経て2008年6月代表取締役社長、14年4月取締役会長、同年6月経団連日本インドネシア経済委員会委員長。東京都出身、67歳。

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新しい経済関係に道筋 国民優先の政治に注目 大八木委員長インタビュー解説 ジョコ新政権で土壌整う 経団連 (2014年08月28日)

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