新刊月100冊を発売 グラメディア出版部門

 日本のコミックが翻訳されて店頭に並び読者の手元に届くには、インドネシア国内の出版社の力が必要だ。日本版元のほとんどがビジネスパートナーとして関係をもつのがコンパス・グラメディアグループの出版部門、M&Cとエレックス・メディア・コンプティンド(EMK)だ。日本とインドネシアのコミック界をつなぐ編集の現場を訪ねた。

2ヵ月で新刊作成 M&Cの編集現場
 中央ジャカルタのパルメラにコンパス・グラメディア出版部門のビルがある。6階にあるM&Cは社員は29人、編集者と本の装丁を行うデザイナーで構成される。同社は主に少女漫画を編集発行を行い、1ヵ月に100タイトルの新刊コミックを出版する。その内約85%が日本からの漫画で残りが韓国、香港、台湾からの作品だ。「日本の出版社とはほとんど取引があります」と編集者のムスティカさん。
 翻訳コミック作成の流れはどうなっているのか。一般的なケースでは刊行が続いているシリーズものは別にして、単発ものは、日本の出版社やエージェントを通じてタイトルのカタログが送られて来る。その中から出したい作品をリクエストし作業が始まる。編集者は日本の原版をコピーし吹き出し等の翻訳を担当する外部スタッフに渡す。翻訳した原稿を印刷に回し、ゲラをチェックする。表紙は日本側の確認が入るためタイトルと絵のバランスや色の出具合にも注意する。原版を入手してから2カ月で店頭に並ぶ。初版部数は5000部が最低で人気作は8万部以上になることも。
 ただし日本の漫画がそのまま使える訳ではない。インドネシアの文化習慣を考慮し、肌が露出した性的なシーンや暴力的なシーンはコマから外されるか、修正が加えられる。そのチェックも編集者の重要な仕事である。同社で今までで一番売れた日本コミックは「miiko!」(日本版名は『こっちむいて!みい子』、おのえりこ作、『ちゃお!』連載中)。発売以来12年間売れ続けている。小学5年生の女の子が主人公の漫画だが人気の理由について「キャラクターがかわいい。学校や家庭が舞台なので、この話よく分かる、という声が多い」(同社編集者のイネさん)。
 同社の調査によると読者はコミックに対し、「ストーリー、絵、カバー(表紙)」を購入の際に気にしているという。「日本の漫画はそこが優れている」とムスティカさんはいう。インドネシアの若年層は女性の方が多く、その点でも少女向けコミックは人気が高いとしている。

読み手から書き手へ 漫画家スクールも登場
 少年漫画の方はどうか。少年向けコミックを一手に担うのがEMKだ。同社では91年から日本コミックを翻訳出版している。大ヒット中の「NARUTO」「ONE PIECE」や現在売れている「進撃の巨人」も同社の扱いだ。編集者のロイスさんに聞いた。
 「子供の頃から日本のアニメ放送に慣れ親しんでいるので、読者は日本コミックに抵抗がない。漫画と言えば日本コミックのことと言っていいのでは」。7年前に入社し、毎週2冊の新刊を作成するという。自身も漫画好きで「どれが売れるか、作品選びが大切です」という。現在レバラン休暇を控えているため「印刷などの締切りが早くなり、刊行スケジュールを調整するのが大変です」と笑う。 
 M&C、EMKが海外からの翻訳コミックのほとんどを出版している。グループ内にインドネシア国内の漫画を販売する部門もあるが、売上は多くない。今後国内作家の育成が課題となるが、現在の作業には日本の出版社が行っているような新人発掘育成システムはない。M&Cのムスティカさんは「国内作家の開発をしていきたい」と話した。 読み手から書き手へ、漫画家を目指すインドネシア人のための学校も増えてきた。先月南ジャカルタ・ブロックMの「アンバサダーカフェ」ではプロ漫画家養成を目的に「MANGA PRO CLASS」を開校した。また西ジャカルタの日本語学校「IkuZo!」でも先月漫画ワークショップを開いた。日本人の元漫画編集者を講師に招くなどし、漫画作成のノウハウを教えている。

「マンガ・フェス」開催 日本側本格参入に
 将来的なコミックの大市場としてインドネシアが注目され、日本のコミック出版を手掛ける大手版元12社が10月下旬来イする。ジャカルタ特別州内各地で「マンガフェスティバル・イン・インドネシア」(10月31日〜11月9日)と銘打ちコミックの内容展示や漫画家サイン会などを予定している。「日本コミックの魅力を発信する場としたい」(同実行委員会事務局)とし、共催する経済産業省も「漫画は日本が世界に誇るクールジャパンの1コンテンツ。市場規模を考えてもインドネシアは伸びしろが大きい」(メディアコンテンツ課)としている。
 各出版社も現在の翻訳ビジネスだけにとどまらず、今後漫画キャラクターを生かしたライツ(権利)ビジネス全般にまで展開する戦略を描いている。アニメ映像化やグッズ販売、漫画学校の開校などが予想される。「読者が成熟してきた市場を更に大きくするためには、漫画文化を広げることが重要です」と星野文化通信編集長は話す。

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