最賃2年で60%上昇  大統領「低賃金時代終わり」  製造業が悲鳴

 1日にジャカルタ特別州が2014年最低賃金を前年比10・4%増(労働組合要求は同50%増)の244万1301ルピアと発表したことで、製造業を中心とする日系企業関係者は12年から直近2年での60%上昇に悲鳴を上げている。「チャイナ・プラス・ワン」の一国として東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも、人件費が安いとして投資家から注目されてきたインドネシア。日系製造業が多く入居する西ジャワ州ブカシ県の最低賃金の上昇幅次第では、自動車メーカーの多い中国・広州市、ASEAN諸国内でライバルとされるマレーシアと人件費で同水準となる可能性も大きい。ユドヨノ大統領は4日、「低賃金時代は終わった」と言明。経営者は製造工程の自動化・省人化などへ方針転換せざるを得ないのが実情だ。            
 「中国の人件費上昇を理由にインドネシアを進出先として選んだ中小企業も多く、たった2年でこれほどの賃金上昇は『だまされた』という感じが否めない」―。ブカシ県の工業団地に入居する日系自動車部品メーカーの社長は肩を落とす。 
 ブカシ県の14年最賃の前年比引き上げ幅が労働組合側が要求する50%と仮になった場合、約360万ルピア(1日時点換算レートで320・04ドル)となり、中国の上海市の13年最賃の1620元(同265・59ドル)、マレーシアで工業化が進んでいる半島部の900リンギット(同283・55ドル)を上回ることになる。
 ユドヨノ大統領も4日のインドネシア商工会議所(カディン)との会合で「今後、他国との競争で安い労働力を強みとする考えは通用しない」とし、生産性と労働効率性を向上させるべきだと強調した。大統領は昨年から労働者の賃金・福祉を向上させる方針を示している。
 日系企業は安い労働力を求めアジア諸国に進出したが、人件費の上昇に悩まされている。
 13年時点で、中国、マレーシア、フィリピン、タイは月額250ドル以上の人件費を必要とし、それ以外の国はインフラ整備の遅れや政情不安定などが進出の際の課題となっている。
 「ミャンマーなども賃金の安さで将来的に希望が持てるが、当面先。最低限の条件がそろい人件費が安いという点では、インドネシアが有力な投資先と判断する企業が多かった」(別の日系自動車部品メーカー社長)など、アジアの人件費上昇は日系企業にとって共通課題となっている。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所の富吉賢一所長は、「タイなど周辺諸国では労働者の需給が逼迫しているため、最低賃金以上の賃金でしか雇えず、一方インドネシアは14年最賃の水準でも相対的に安い」とみている。
 ただ、賃金が大幅上昇した13年を境にインドネシアの賃金はもはや低水準ではないという認識が日系進出企業間に共有され、中部ジャワなど地方への拠点移転や製造工程の自動化の計画が本格的に進み始めたという。
 富吉所長は、産業機械関連の売り上げは各産業の生産増が進んだため伸びていたが、「今後販売を伸ばすためには『これ以上人を増やさない形で生産を増やす』という側面が強まってきた」と話している。(赤井俊文)

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