【火焔樹】鬼の角 (2013年09月20日)

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 メードが私に尋ねる。夕食のキャンセルの知らせを入れずに遅く帰ってきたお客さんが「奥さん、これか?」と後頭部の後ろから左右の人差し指を頭の上に突き出す格好をするという。
 彼女はまったく意味が分からず、「同じように人差し指を後頭部の左右から出しておいた」とニコニコしながら言う。えーっ。そして、「奥さん」って一体何の意味なのだと聞く。
 日本人なら誰でも、怒ると鬼のように角が出ると言う意味であるということが分かるが、インドネシアにはまず日本の鬼のようなものがいない。お客さんは、夕食をとらないことを知らせなかったので気にされているのだが、実際に私は料理をするだけで、待っているのはメードなので、かわいそうなのは彼女たちである。不思議と、日本人は皆、鬼の角を出した格好の意味がメードに伝わっていると思っている。
 またメードが鼻のてっぺんを指差して、鼻のことを「なんの」と呼ぶのかと聞く。お客さんが自分のことを差すのに、鼻の頂点を人差し指でさしながら、「なんの、なんの」と言ってると言うのだ。彼女は鼻の頂点を指差しながら「なんの、なんの」とつぶやいている。
 インドネシア人は、自分を差す時、指をそろえて開いた右手で左胸を押さえるしぐさをする。日本だったら、さしずめ気持ち、心意気ということになるであろう。
 日本でお金を表す場合、親指と人差し指でコインの形を作るが、インドネシア人では右手のそろえた薬指から人差し指まで親指で数度こすって、紙幣を数えている仕草をする。 
 身振り手振りもその国の言葉で、所変われば品変わる。田舎では、温かいご飯をわざわざうちわで冷ますと言って、ジャーから別の器に出しているメードを見ながら、不思議がっても仕方がないとあきらめる。(ゲストハウス経営・平井邦子)

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