【揺れる民主化・1部社会】(2) 若者社会 スハルト知らない新世代  (2013年05月22日)

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 故スハルト元大統領を懐かしむ大人がいる。一方でスハルト時代の肌感覚が無い「90年生まれ世代」が社会の主役になる日が近づいている。
 西ジャカルタ・カリデレスの中学2年スフィさん(15)は「パッ・ハルト(スハルト氏の愛称)はたぶん、偉大な人かな」と言う。学校でスハルト政権崩壊を詳しく教わってはいない。それよりもサッカーに夢中だ。「将来はメッシみたいになりたい」。深夜放送のFCバルセロナの試合は欠かさず見る。
 「学生がデモをしたんでしょう」。中央ジャカルタ・チキニの中学2年グレンさん(15)はスハルト政権崩壊を両親から教わったが現実感がない。フェイスブックが好き。そこには数百人の「フレンド」に自分を表現する空間が広がる。
 スフィさんとグレスさんはスハルト政権が崩壊した98年生まれ。スハルト時代の記憶はない。平均年齢28歳で17歳以上が有権者になる若い社会。来年の総選挙・大統領選でも20代の投票がかぎを握る。
 南ジャカルタの衣料品工場で働くルトフィさん(21)は来年の選挙が国政選挙初投票だ。報道番組より娯楽番組をよく見る。知っている政治家は若者に人気のジョコウィ知事だけだ。「たぶんジョコウィが大統領になればいい」
 もちろん政治に関心の強い若者もいる。16日、仏教徒大学生協会の反汚職デモ。デモ統括者のトリスマさん(24)は「宗教省は情報を開示してほしい。『改革』の火を止めてはいけない」と力を込める。
 しかし大学生の政治意欲は目に見えて小さくなった。ナショナル大学のウチュ・ファディラ講師は「15年前学生は毎日デモをした。だがいまはあまり行かないと思う」。若者の多数派はノンポリ。投票や言論が制限されたスハルト時代を知る大人とは関心が違う。
 2月の労働統計によると、労働者人口は1億1810万人。うち小卒以下が5462万人(47・9%)、中卒2030万人(17・8%)。中卒以下が65%を占めている。東ジャワ出身で北ジャカルタ在住の警備員サウィジさん(22)は「レフォルマシ(改革)に興味ない。友だちと遊ぶのが大事」と言い切った。
 中央ジャカルタ・クボンカチャンの即席麺屋はグリンドラ党の連絡所を兼ねる。従業員の男性(21)は暴動を扇動したとされるプラボウォ・スビアント氏を「正義感のある素晴らしい人」と評する。「98年のことはよく分からない」
 国営ガス小売り会社に勤めるムハルジャル(27)さんは大卒のインテリ層。スハルト時代をよく知っている。「汚職が見えるようになった時代。スハルト政権末期の方が経済は良かったのではないか」と話した。(吉田拓史、つづく)

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